出口のない求愛

2007年 生活 日常
出口のない求愛

玄関にスズムシが紛れ込んだ。

夜になると、リリリリリリ、鳴きはじめる。家の中にいるので大音量だ。どうにかしたいけど、近づくと鳴きやむので居場所を特定できない。しかし玄関で鳴いていることは間違いない。

日中、戸を開けて外に逃がそうとするが、出てこない。靴をよけて、掃除をしても見つからない。
(あれれ、気づかぬうちに出て行ったのかな?)
と思っても、夜になると、リリリリリリ、鳴きはじめる。たまらない。

──なぜスズムシは鳴くのだろう?
求愛のためか? しかし閉ざされた玄関では、異性と巡り会う可能性はない。誰も来ないのに必死に求愛しつづけるなんて、哀しすぎる。

3日目あたりから、昼間も鳴きはじめた。
玄関は暗いから時間の感覚が狂ったのか、あるいは最後の力を振り絞っているのか?

リリリリリリ……リリリリリリ……リリリリリリ……。

ふたたび戸を開けてスズムシを捜索するが、見つからない。
うーむ。

4日目。

静かになった。

ちょっと哀しかった。

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