シルバーコロンビア計画を忘れるな

2008年 政治・経済 旅行 海外
シルバーコロンビア計画を忘れるな

「2千万円の退職金と月額20万円ほどの年金があれば、海外でのんびりセカンドライフを送れますよ」

 そんな言葉に踊らされ、スペインに旅立った老夫婦は、いま、ユーロ高による生活苦にあえいでいるらしい。

 この20年でスペインの物価は倍近くに上昇した。軽く外食しただけでも40ユーロ(6,400円)はかかる。とてもじゃないが、悠々自適のセカンドライフは送れない。行き場を失った老人の多くは、デフレが進んだ(物価の安くなった)日本に戻ってきているそうだ。

シルバーコロンビア計画

 1986年、政府は「シルバーコロンビア計画」を提唱した。定年退職者たちの海外居住を支援するプログラムである。当時はバブル景気で急速に円高が進んでいたこともあり、物価の安いスペインやオーストラリア、ニュージーランドへ移住すれば豊かなセカンドライフが送れると見込まれていた。

 しかし内外の批判を浴びて計画は頓挫。その後のバブルの崩壊や、国の情勢も変化して、当初のもくろみは大きく狂った。1986年で60歳なら、現在82歳。生活費が足りないからと言って、バイトできる年齢でもない。これは厳しい現実だ。

 それでもまぁ、望んで海外に移住したならまだマシだ。退職金や年金が少なくて、それでも暮らせる場所をと思って海外に出たなら、悲惨としかいいようがない。さらに物価の安いところへ移住するか、さらに生活水準を下げるしかないのだから。

 「稼ぐに追いつく貧乏なし」という。働けるうちは、どんな世情でも暮らしていける。貧乏を楽しむ余裕もある。しかし働けなくなったら、たちまち貧乏に追いつかれてしまう。死ぬ前日まで働く人でなければ、誰もが老後の計画を立てなければならない。

 世の中の変化が早くなった分、老人には過ごしにくくなったと思うよ。