機械化される売り子さん

2008年 科技 スーパーにて 日常
機械化される売り子さん

 スーパーを歩いていると、店員がいないのに声が聞こえてくることがある。

「今日は○×が安いですよ~!」
「この季節はやっぱり△□!」
「ただいまキャンペーン中につき、☆◎が10%引き!」

 よく見ると、棚や床にラジカセが置いてあって、録音された売り文句がループ再生されている。なるほどラジカセを使えば、複数の場所で、同時に、長時間、休まず客を案内できる。売り子をたくさん雇ったり、教育する必要もない。アイデアだよな。
 先日、その売り文句を録音している現場を見かけた。店員が背中を向け、ラジカセに向かってしゃべっている。聞き慣れた声なんだけど、なにか聞こえ方がちがうと思ったら、「生放送」だったわけだ。ちょっと驚いたよ。

 しかし考えてみれば、(声がすれば)人間がしゃべっている方が自然じゃないか。ラジカセによる案内なんて、数年前は珍しかった手法なのに、すっかり慣れてしまって、(声が聞こえていても)人間はいないと思い込んでいた。妙な話だ。

 最近のスーパーには液晶モニタもあって、映像も流れている。技術が進歩すれば、人の流れや在庫に応じて、売り文句を変えられるだろう。さらに進化すれば、試食コーナーの売り子もロボットになると思う。

「あと3つ、あと3つですよ~」
「奥さん、どうです? たまには精の付くものを~」
「よし、1コ、オマケしましょう!」

 そんな会話をしながら、ふと相手が生きた人間であることに驚くような未来が訪れるのかもしれないね。