モノ作りとカネ作り:A面

2008年 政治・経済 仕事
モノ作りとカネ作り:A面

先日、モノ作りについて友人に説教された。

「人生の喜びはなにか?」と問われて、日本のモノ作りについて言及した。いろいろ不透明な世の中で、モノ作りの技を身につけることは着実に思える。よいものを作って売る。自分が存在することで、世の中がちょっぴり豊かになる。これに勝る喜びはないだろう。
と話していたら、友人は首をかしげて言った。

「考えが古いよ。モノを作って売る時代は終わったんだ。
 いま匠がやってる仕事は将来、ブラジル人がやる仕事だね」

友人はつづけた。

「長者番付にモノ作りをする人が名を連ねたことはない。みんな投資家たちだ。つまり金融経済の流れに乗った人が成功してるんだ。

「かつてはモノ作りが経済の中心だった。実物経済だね。金融経済はそのオマケ、イヌで言えば実物経済が胴体で、金融経済は尻尾だった。
 しかし前世紀末からアメリカは金融経済を強化した。言い換えるなら、モノ作りは日本や中国に任せて、自分たちはカネと権利に集中したわけだ。結果、金融経済は肥大化し、実物経済を圧倒するようになった。イヌの尻尾(金融経済)が胴体(実物経済)を振り回しているわけだ。

「日本は国土が狭く、資源もないから、実物経済では立ちゆかない。日本の豊かさは、他国を経済的に支配することで成り立っている。日本は金融経済を発展させるしかない。

「政府も金利を下げ、国民が貯金を投資にまわすよう誘導している。『会社は株主のもの』という認識も浸透した。かつて日本の農業が捨てられたように、日本のモノ作りも捨てられるだろう。
 そんな状況でモノ作りに期待するのは馬鹿かげてるよ」

とくに反論はないのだが、そんなことを説教される筋合いはない。「人生の喜びはなにか?」を話していたはずなのに、「効率的な稼ぎ方はなにか?」にすり替わってしまった。まぁ、いいけど。
私は言った。

「投資で稼いで幸せになれるなら、なんの悩みもない」

というわけで、この話題は終わった。