モノ作りとカネ作り:B面

2008年 政治・経済 仕事
モノ作りとカネ作り:B面

友人の話を聞いて、このエピソードを思い出した。

とあるメキシコの田舎町。海岸に小さなボートが停泊していた。メキシコ人の漁師が小さな網に魚をとってきた。その魚はなんとも活きが良い。それを見たアメリカ人旅行者は、「すばらしい魚ですね。どれくらいの時間、漁をしていたんですか」と尋ねた。

漁「そんなに長い時間じゃないよ」
旅「もっと漁をしていたら、もっと魚が獲れたんだろうね。惜しいなぁ」
漁「自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だ」
旅「それじゃあ、あまった時間はなにをするの?」
漁「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから漁に出る。戻ってきたら子どもと遊んで、女房と昼寝して。夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって...ああ、これでもう一日終わりだね」

すると旅行者はまじめな顔で漁師に向かってこう言った。

「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間として、きみにアドバイスしよう。いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、漁をするべきだ。それであまった魚は売る。お金が貯まったら大きな漁船を買う。そうすると漁獲高は上がり、儲けも増える。その儲けで漁船を2隻、3隻と増やしていくんだ。やがて大漁船団ができるまでね。そうしたら仲介人に魚を売るのはやめだ。自前の水産品加工工場を建てて、そこに魚を入れる。その頃にはきみはこのちっぽけな村を出てメキソコシティに引っ越し、ロサンゼルス、ニューヨークへと進出していくだろう。きみはマンハッタンのオフィスビルから企業の指揮をとるんだ」

漁「そうなるまでにどれくらいかかるのかね?」
旅「20年、いやおそらく25年でそこまでいくね」
漁「それからどうなるの」
旅「それから? そのときは本当にすごいことになるよ」と旅行者はにんまりと笑い、「今度は株を売却して、きみは億万長者になるのさ」

「それで?」
「そうしたら引退して、海岸近くの小さな村に住んで、日が高くなるまでゆっくり寝て、日中は釣りをしたり、子どもと遊んだり、奥さんと昼寝して過ごして、夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって過ごすんだ。どうだい。すばらしいだろう!」

思うに、人生の喜びはU字型をしているのではないか。
貧乏人は貧乏人なりに幸せ(↑)で、金持ちもやっぱり幸せ(↑)で、底辺(↓)にいるのは都会に生きる小市民のような気がする(底辺の人口が多いので、V字ではなくU字になるわけ)。

さて、私たちがU字の底にいるとしたら、どっちに向かえばいいだろう?

モノ作りとカネ作りの選択は、ここにあると思う。