歴史と数学

2008年 哲学 考え事
歴史と数学

「歴史なんてくだらないね」と、友人Sは言った。

今から20年前、高校3年生だったころの話だ。友人Sは歴史が大嫌いで、歴史を好んで勉強する人も軽蔑していた。そして私は歴史が好きだったから、興味をそそられた。なぜ歴史はくだらないのか?

「歴史はコロコロ変わるから、記憶する価値がない」とSは答えた。
確かにそうだ。事実は不変だが、歴史という学問は完全ではない。新たな発見があれば書き換えられるし、政治的な理由で改ざんされることもある。私たちが学ぶ教科書は、両親が学んだ教科書とも違うし、私たちの子どもが学ぶ教科書とも違うだろう。

先月のニュースで読んだけど、いつの間にか歴史の教科書はだいぶ変わっていたらしい。親子のあいだでも歴史上の名前や事実がちがうのは驚きだ。

  • 鎌倉幕府の成立は1192年(イイクニつくろう) → 1185年が有力。
  • 源頼朝の肖像画 → 別人の可能性があるのでカット。
  • 聖徳太子 → 一万冊にも使われた肖像画は、やはり別人の可能性があるのでカット。
    →名前も「厩戸(うまやど)皇子」に変更。
  • 日本最古の鋳造貨幣は「和銅開珎」 → さらに古い「富本銭(ふほんせん)」に変更
  • 大化の改新 → 乙巳(いつし)の変
  • 踏み絵(ふみえ) → 絵踏(えぶみ)
  • 百済(くだら) → 百済(ペクチェ)

「でも歴史を学ぶことで、未来を変えられるんじゃないか?」
私の反論に、Sは答えなかった。不毛な議論はしない主義らしい。私も自分で言っておきながら、あまり自信はなかった。果たして歴史は人類を幸せにできるのか? あるいは歴史は実生活に役立つのか?
この100年くらいの近代史は否応なく知っておくべきだ。しかし高校で学ぶ日本史や世界史は、原始時代にはじまって近世あたりで終わってしまう。大切な部分が抜け落ちているので、ますます反論しづらい。

Sは数学の信奉者だった。「将来は数学者になりたい」と言っていたが、なれたんだろうか? それはともかく、たしかに数学の定理はコロコロ変わらない。しかし高等数学が実生活に役立つんだろうか? Sくらいの知性があれば、日曜大工に三角関数を、自然観察にフィボナッチ数列を活かせるのかもしれない。
私と言えば、観光名所を訪れたときに歴史を思い出すくらいか……。

  歴史と数学は、どっちが役に立つのか?

いまだに結論の出ない問いかけだ。
ふと思い出したので、書き留めておく。

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