好きな作家 - 星新一

2008年 娯楽 小説
好きな作家 - 星新一

私は短編が好きだ。

短編は物語の起伏が豊かだし、読後の余韻もすぐ楽しめる。続きを気にすることも、登場人物の多さに混乱することもない。長編もきらいではないが、投げっぱなしに幻滅したくないので、あまり読まない。

そして書くのも短編が好き。これまでに書いた作品の中で、もっとも長いのは原稿用紙250枚(70,012文字)の中編。一気に書き上げたけど、ものすごーく消耗した。これ以降、私は短編しか書かないようになる。
読んだあとに爽快感があるように、書いたあとにも達成感がある。短い方がたくさん書けるので、たくさん楽しめるというわけだ。

短編と言えば、星新一。
生涯に1,000編以上の作品を残しており、「ショートショートの神さま」とも呼ばれる。私の好きな作家の1人だ。

星新一の作品には、国や時代を示すような固有名詞が出てこない。たとえば「ソ連」ではなく「R国」、「福井さん」ではなく「エフ氏」、「100万円」ではなく「大金」といった具合だ。星新一の作品が20言語以上で読まれている理由の一端が、ここにあると思う。
もっとも好きな短編集は、『ノックの音が』だ。

小学生のころ、星新一の作品をたくさん読んだ私は、星新一のような作品を書きたいと思うようになった。中学生になり、「N氏が...」ではじまるようなSF短編をいくつか書いてみたが、ぜんぜん及ばないことがわかった。星新一の作品をゴテゴテに装飾することはできても、同じくらいシンプルにまとめるのは至難だった。

そこで私は、星新一にない要素を取り入れることにした。
暴力やセックス描写である。グロテスクな表現は避けているが、グロテスクな展開はむしろ多い。星新一が「大人も楽しめる童話」を書いたので、私は「子どもは楽しめない童話」を書こうと思ったわけだ。まぁ、結果論だけどね。

星新一のショートショートは原稿用紙5~10枚くらい。私のショートショートは原稿用紙3~4枚。きわめて小さい。もう少し枠を広げてもいいなと思う反面、この短さこそが私の個性ではないかと思い、揺れ動いている。