挨拶に見る地域差

2009年 社会 住まい 旅行
挨拶に見る地域差

九州旅行では、道ゆく学生によく挨拶された。

「おはようございます」と声をかけられると、ドキッとしてしまう。それが自分に向けられた挨拶だと気づき、あわてて返礼する。向こうはふつうの学生さんで、私は大きなリュックを背負った旅行者。挨拶のあと、なにか話すわけじゃなくて、ただ道で行き会ったから挨拶しただけ。見知らぬ人と挨拶を交わすなんて何年ぶりだろう。かなり新鮮だった。

そのことを民宿のおじさん(元学校の先生)に話すと、
「目上の人に挨拶するのは当然でしょう?」
と言われてしまう。うーん、さらに新鮮だ。

都市部では、挨拶を交わす習慣は失われて久しい。見ず知らずの人に話しかけない、話しかけられても答えないのが「常識」だ。しかしそれは毒された常識だと思い知らされる。気軽に挨拶できない理由を考えると、都市部の歪みが見えてくる。

観光地だから挨拶(サービス)してくれるわけではない。今回訪れたところでは、福江島や島原の学生は挨拶してくれたが、熊本や博多の学生は目を合わせることもなかった。やはり人が多くなると、互いを見ないように、必要ない接点をもたないようになる
まぁ、都市部でいちいち挨拶していたら歩けないから、仕方ないと言えば仕方ない。しかし必要な接点、必要でない接点とはなんだろう? 都市部の学生は必要なときも挨拶せず、田舎の学生は必要なくても挨拶してくれる。どちらがいいんだろうね。

学生さんばかりでなく、今回の旅ではいろんな人に話しかけられた。
「どっから来たの?」
通行人も、店員も、タクシーの運転手も、路肩の警備員も、みんな気さくに話しかけてくる。おかげで有益な情報を得ることもできた。いや、情報うんぬんではなく、現地の人との交流は思いのほか楽しかった
たとえば、島原の足湯(ゆとろぎ足湯)では、早朝に現地のご老人たちと一緒に足を温めた。
「みなさんは毎朝、ここに来てるんですか?」
「はーいー」
まるで旅行番組に出演しているような気分。住むなら便利な都市部がいいと思っていたが、地方もあんがい悪くないかも。

写真は福江島の「長崎県立五島高等学校」。旧石田城(福江城)の本丸跡地に校舎が建っているので、登校が登城のように見える。