本当のことなんて言えない

2009年 哲学
本当のことなんて言えない

実家に帰ったとき、高校時代の友人と夜通し語り合ったのさ。

昔はよくこうしてファミレスで夜を明かしたっけ。ふたりともいいオトナなんだから、レベルの高い店に行けばいいのだが、あいにくレベルの高い店は知らないし、ファミレスの方が落ち着くんだよね。
注文はフライドポテトにチキン(←チキンを注文できるところがオトナ)。ドリンクバーのコーヒーをがぶがぶ飲んで、トイレで排泄する。ふたりとも禁煙したので、灰皿を使わなくなったのは大きな変化だ。

久しぶりだから、話すネタはたくさんある。しかし私たちは、互いに近況報告せず、詮索もしなかった。30代後半になると、リアルな話題も、夢のある話題もしづらくなる

「おまえ、それしか給料もらってないの?」とか、
「そんな仕事、やめちまえ!」とか、
「いつか、○×に挑戦するんだ!」といった話題は出てこない。

解決できる問題はとっくに解決してるから、この齢で残っているのは一生付き合っていく問題だけ。他人がおいそれと口出しできる領域じゃない。そして、「将来」を語るほど若くもない。できることはやってるし、やってないことはできないのだ
そうした話題を避けると、話せるのは映画やアニメのことに絞られる。

「あの新作は見たか?」
「そのへんはもうチェックしてねーな」
「知らないのか? △□は◎☆だったんだぜ」

当たり障りのない会話だ。
もっと突っ込んだ話をしたかったのに。するはずだったのに...。親友なのに、深いことを話せないのか。親友だから、深いことを話せないのか...?

カウンセラーは他人だからこそ、成立する商売かもね。

ページ先頭へ