[小説] 駿河城御前試合 / どうにも止まらない剣士たち

2009年 娯楽 小説
[小説] 駿河城御前試合 / どうにも止まらない剣士たち

南條範夫の『駿河城御前試合』を読了した。

終駿河城御前試合:あらすじ

江戸時代初頭、駿河城内で挙行された真剣御前試合は、凄惨極まるものだった。
出場剣士11組22名のうち、敗北による死者8名、相打ちによる死者6名、射殺2名、生還できたのは6名だった(うち2名は重傷)。
いかなる事情を抱える者が、いかにして試合に挑んだのか......。

山口貴由のマンガ『シグルイ』の原作となった時代小説である。この6年で12巻が発売されたが、まだ最初の35ページ(第一試合)も終わっていない。あまりにも遅いので、待ちきれず原作を読んでしまった。

おもしろかった。
天下太平の世の中で、なぜ真剣で試合をしなければならなかったのか? サディストの領主が命じたせいもあるが、それ以前に、生死を決せねば止められない人間の激情がある。恨みや嫉妬、狂気、あるいは誤解から激突する剣士たち。彼らの内面をのぞいた上で、愚かと笑える者がいるだろうか。
1つの結末を見るたび、やるせない気持ちになる
この読後感は、とても新鮮だった。

埋もれた名作は多い

これほどおもしろい時代小説が、長く絶版だったことに驚く
『シグルイ』人気がなければ再版されず、私が読むこともなかっただろう。幾度か漫画化された名作でも、時の流れには勝てないのか。毎年、大量の新刊が発表されて、それと同じ分だけ既刊が消えていく。本棚に並ばない名作は増えていくばかり。
じつにモッタイナイ話だ。

原作を読むと、漫画がいかに奔放に脚色されているかがわかる。まるっきり別物だ。こんなにちがうなら、(先の展開を知っていても)漫画は漫画で楽しめるだろう。ただし、このペースで漫画化していくと、最終試合まで何十年かかるかわからないけどね。

通常、私は連載中の漫画の原作を先に読むことはない。アニメはアニメ、漫画は漫画、小説は小説で、1つずつきちっと楽しみたいからだ。
ゆえに『花の慶次』の連載中は、原作である『一夢庵風流記(隆慶一郎著)』を読まないようにしていたが、連載が10年もつづいたため、読む機会を逸してしまった。同じく『バガボンド』の原作である『宮本武蔵(吉川英治著)』も読んでない。
最近の漫画は長期化しやすいので、連載が終わるのを待ってから原作を読むのは、難しくなった。