ニドーネの魔女

2009年 生活 健康
ニドーネの魔女

どれほど多くの人間が、彼女の誘惑に膝を屈したことだろう?

ニドーネの魔女──。
彼女は甘美な眠りと引き替えに、その日の活力の大半を奪い取ってしまう。
ぱかっと目が覚めて、すぐ起きれば気分爽快なのに、二度寝してぐだぐだモードで一日を過ごしたことがあるだろう。寝坊や居眠りで、人生を棒に振った者も多い。二度寝した時間に比例して、気力も体力も鈍化する。それがわかっていながら、彼女に身をゆだねてしまうのだから、やりきれない。

もちろん、ニドーネの腕をふりはらって、布団から抜け出した経験もある。
しかしたとえば5時に起きると、8時くらいにまぶたが重くなり、二度寝しなかった自分を責めることになる。だがそれはニドーネの罠だ。ぱかっと目が覚めて、爽快だった朝は忘れ去られ、まどろんだ朝だけ印象に残る。こうして、
(いま起きても、また眠くなるからなぁ……)
と、ニドーネに抱かれてしまう自分を正当化するわけだ。

暑くて目が覚めたのか、十分寝たから目が覚めたのか。

自分で自分のことがわからない。
今朝の私はニドーネに勝ったのか、それともまだ鎖につながれているのか……。