[報道・教養] ルビコンの決断「日本理化学工業 あなたはなぜ働くのですか? ~日本一優しい会社が問い続けた50年~」 / 障害者の雇用を考える

2009年 社会 報道・教養
[報道・教養] ルビコンの決断「日本理化学工業 あなたはなぜ働くのですか? ~日本一優しい会社が問い続けた50年~」 / 障害者の雇用を考える

久々に「ルビコンの決断」を見たら、興味深いテーマを取り扱っていた。

経済ドキュメンタリードラマ「ルビコンの決断」あなたはなぜ働くのですか? ~日本一優しい会社が問い続けた50年~

神奈川件のチョークメーカー・日本理化学工業は、途中で辞める社員がほとんどいない。50年前に就職した65歳の女性も、ほぼ無遅刻・無欠席で今なお働き、「仕事が楽しい。まだ働きたい」と笑顔で答える。じつはこの会社、従業員の70%は知的障害をもっている。にもかかわらず好業績で、「ガラスに書けるチョーク」といったヒット商品まで生んでいる。
不況で給料も業績もあがらず、「なんのために働くか」に悩む人も多い中、どうしてこのような会社が成り立っているのだろうか?
[URL] https://www.tv-tokyo.co.jp/rubicon/backnumber/091015.html

知的障害者は複雑な行程は覚えられないが、単純作業は驚異的な集中力で取り組んでくれる。しかし単純作業だけでは採算が合わないし、ほかの従業員にも面倒をみる手間がかかる分だけ、生産効率は下がる。健常者にとって障害者は重荷でしかない。

しかし障害者を鍛えるのではなく、作業工程を簡単に組み替えると、思わぬ効果があった。
たとえば原料をラベルではなく色で識別できるようにすると、障害者が着手できるだけでなく、健常者の効率もアップした。健常者はなまじ文字や数字が読めるので、頭を使う工程を省こうとしない。言い換えるなら、作業工程に自分を合わせてしまう。しかし発想を逆転させ、行程を見直していくと、健常者にとってもより働きやすい環境が得られたのだ。

人の幸せは4つ。
人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人から必要とされること。
働くことによって愛以外の3つの幸せは得られます
その愛も、一生懸命働くことによって得られると思います。
日本理化学工業 大山会長

なんのために働くのか。これはその答えの1つであろう。

私は怖かった

話を、障害者の雇用に戻そう──。
会社で人材募集すると、障害者や外国人からの応募が多い。そのたびに考えるのは、彼らを雇うことによる効果と責任だ。

職場環境は、できる人に合わせて構築される。(健常者であっても)できない人は重荷であり、不断の努力を強いられる。この勢いが会社を成長させるのだが、同時に人間関係をきつくしてしまう。また無視されがちだが、できる人ばかり求めていくと、業務効率は高まる一方で、非常に危うい状態になる
障害者や外国人を雇うことで、こうした風潮に歯止めをかけ、行程を見直すキッカケになればと思うのだが、雇うことの責任を考えると決断できなかった。私はルビコン河を渡れなかった。

生物界には、勢いを際限なく増幅する「正のフィードバック」と、これを抑制する「負のフィードバック」がある。しかし都市社会は負のフィードバックを徹底的に排除するため、正のフィードバックは破綻するまで止まらない(止められない)。その例は挙げるまでもないだろう。
障害者の雇用は単なる善行ではなく、自分たち健常者を救う手がかりになるかもしれない。

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