薄れゆく欲望

2010年 生活 健康 物欲
薄れゆく欲望

「最近は食べたいものを思いつかなくなったな~」とN氏は言う。

久々にN氏と飲むことになって、「どこか行きたいところはある?」と問うたときの答え。
これまでは、「ちょっと変わった店」「前々から興味があった店」「あの味をもう一度」をテーマに店を選んできたが、回数を重ねたせいか、候補がなくなってしまったのだ。

「歳のせいかね。40過ぎると、欲望が薄らぐよ」とN氏は笑う。
これは食にかぎった話じゃない。旅行しても、色欲にしても、稼ぎにしても、若いころほどギラギラしていない。まぁ、中年になってもギラギラしてるのは厄介だが、淡泊すぎるのも淋しい。「これが欲しい!」「あれをしたい!」といった欲望に代わって頭を支配しているのは、「過ごしやすい時間をいかに維持するか」という保守的な思考だった。

というわけで、この日も遠くの店を探したり、出掛けるのは避けて、近場で済ませてしまった。焼き鳥とハイボール、豚キムチ。目新しさはないが、これはこれで悪くない。
私もまた、欲望が薄らいできている。

若いころは、欲望をもてあましていた。欲しいものが手に入らず、いつも悔しい思いをしていた。なのに最近は、そもそも欲しいと思わない。なくても困らない。代替品がある。コストに見合ったヨロコビがない……とか考えてしまう。

これが、衰えるということなんだろうか。

いかんなぁと思いつつ、こんなものかと現状を受け入れている自分がいる。
いかんなぁ。