ランチメイト症候群の背景
2010年 社会 NHK 孤独 社会NHKでランチメイト症候群の特集をやっていた。
ランチメイト症候群とは、学校や職場でいっしょに食事をする相手(ランチメイト)がいないことに恐怖を覚えるというもの。自分も該当すると思っていたが、もっと根の深い話だった。
最近の学生は、ひとりで学食に行けないらしい。ひとりで食べるくらいなら、トイレで済ませると言うのだ。私もトイレで食事をする人を見かけたことがあるが、そりゃぁ、驚いたよ(向こうも驚いていた)。なぜトイレで? ひとりで?
私はひとりで食事をするのは苦手だが、怖くはない。しかしランチメイト症候群の人は怖がっている。ひとりで食事をすることではなく、ひとりで食事をしている現場を見られることを恐れているのだ。
ひとりで食事をしていると、「友だちのいないヤツ」と思われてしまう。「友だちのいないヤツ」というレッテルを貼られると、本当に友だちがいなくなってしまう。だから、見られたくない。だから、トイレで食べるのだ。
つねに誰かといっしょにいないと、あっという間に孤立してしまう。なので空気を読んで、浮かないようにする。携帯メールが届いたら、即座に返信する。いついかなるときも、誰かとつながっている。番組では、携帯電話に700人以上の友だちを登録している学生が紹介されていた。イマドキ、100人くらいの友だちは当たり前らしい。なんだかなぁ……。
これは遠い異国の話ではない。私も、「部下といっしょに食事をしない」という理由で排斥された課長さんを知っている。「みんな仲良し」を偏重するあまり、場を乱すものを追い出そうとする風潮は、(想像以上に)強い。
孤独は怖くないが、排斥されるのは困る。私は、ひとりで食事をするリスクに気づいていなかったようだ。
孤独に歩め...悪をなさず
求めるところは少なく...
林の中の象のように
意味:(よき伴侶がいるなら、ともに高みを目指せばよい。しかしよき伴侶がいないなら、愚かな人に混じって自分を堕落させるよりも)地位や名誉、財産を捨てて、孤独に暮らした方がよい。林の中の静かにたたずむ象のように、ひっそり、気高く生きてゆけ。 ──仏陀『ブッダの感興のことば』第十四章「憎しみ」
孤独は不幸でも、病気でもない。人はもっと孤独でいいと思うのだが、世の風潮はいかんともしがたい。