過酷な禁煙ゲーム

2010年 生活 健康
過酷な禁煙ゲーム

1991年、バイト先の「禁煙ゲーム」がはやっていた。

ルールは簡単。禁煙をやぶったものが、参加者全員に寿司をおごるというもの。みんなで禁煙するための戒めだったが、やがて別の様相を呈してくる。つまり、誰かにタバコを吸わせれば、みんなで寿司を食えて、タバコも吸える(ゲームが終わるから)。だから、あらゆる手を使ってタバコを吸わせようとした。

たとえば、こんな感じ──。
昼食後、灰皿を出して、タバコを口にくわえ、相手にも1本すすめる。そして相手が火をつけた瞬間に宣言する。
「かかったなッ! おれは加えただけで、火をつけてなーい」
これでゲーム終了。みんなで寿司を食べて、一服。ふー♪

ふたたびゲーム開始──。
休憩所で缶ジュースを買っていると、バイト仲間が声をかけてきた。
「おい、聞いたか? ◎×がまた同じ手口に引っかかったって」
「ほんとかよ」
「あぁ、週末は寿司だな」
「よかった、よかった」
と、タバコをくわえた時点で、はたと気づく。
「ウソだろ」
「ばれた?」
私を引っかけようとした罠だった。油断も隙もありゃしない。

結局、誰も禁煙できなかった。ギスギスした関係に疲れ、みんなで一斉にタバコを吸って、終了した。私が禁煙できたのは、13年後だった。

いま、嫁と、お菓子を買わないゲームをやっている。もらったものは食べるが、買っちゃ駄目。買ったら負けというルールになる。お菓子とは、煎餅やスナック菓子などだが、チョコレートやミックスナッツは含まないことになった。

この緊張感をずっとつづけるのは無理だ。お菓子を欲しがらない体質にならなければ。