世界、やばくね?
2011年 社会 海外アメリカは、やっぱり怖い国だった。
米軍が、パキスタンに潜伏していたビンラディン容疑者を暗殺した。オバマ大統領は「正義は達成された」と演説し、アメリカ国民は911の仇を取ったと、お祭り騒ぎになった。
我が耳を疑う事件である。
米軍は、他国に滞在する外国人を家族ごと暗殺しちゃうんだ。拘束も裁判もない。パキスタンは米軍の行動を許可していたんだろうか? 許可していたとすれば、主権国家じゃない。許可してなかったとすれば、アメリカはやっぱり怖い国だ。
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《ビンラディンは悪党だ。無実のアメリカ人をたくさん殺した!》
という意見もあるが、アメリカが殺した民間人とは比較にならない。
中国、朝鮮、グアテマラ、インドネシア、キューバ、コンゴ、ペルー、ラオス、ベトナム、カンボジア、レバノン、グレナダ、リビア、エルサルバドル、ニカラグア、パナマ、ボスニア、スーダン、旧ユーゴスラビア、イラク、アフガニスタン。
第二次世界大戦後、アメリカに空爆された国々である。アメリカの空爆は、悪いやつだけ殺すのか? これらの国の人々は、911の犠牲者より価値がないのか? 死者の数だけ天秤に載せれば、911の犠牲者なんてごくわずかだ。
《戦争だから仕方ない。悪い国家を倒すためにはやむなし!》
という意見もあるが、歴史を学べば考えも変わるだろう。
アメリカはいつも他国で戦争する。弱い国を徹底的になぶって、資源を奪っていく。蹂躙された国の人々はテロで対抗する。あまりにも非対称だ。
国力低下にともなって、アメリカは以前ほど高圧的ではいられなくなった。オバマ大統領は就任時、対話路線への転換を打ち出した。だからビンラディンを見逃せとか、公平な裁判をすべきと言うつもりはないが、「正義は達成された」はないだろう。どんな基準に照らせば、正義なんだ。
ぶっちゃけ、武力による正義なんだよね。つまり、暴力。
オバマ大統領はビンラディン容疑者の殺害について、「アメリカはやろうとしたことをなんでも成し遂げられると証明された」と語り、今後もテロとの戦いに全力を挙げる姿勢を強調した。
このニュースで怖いと思わない人は、本当にしあわせだ。
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アメリカ人がとびきり邪悪とは思わない。彼らは彼らなりに、アメリカの正義を信じている。弱くて資源をもつ国ばかり「悪」と認定され、戦争したいときに「大義名分」が湧いて出てくることに、疑問を抱く人は少ない。また、そういう人は出世しない。
ぶっちゃけ、強い国が弱い国を搾取するのは当たり前だ。組織は自己を正当化し、肥大化していく。アメリカが手を抜けば、ほかの国が台頭するだけの話だ。
私と言えば、自分の暮らしがテロから遠くにあって、平穏な日々がつづくことを祈りばかり。テロの加害者にも被害者にも、報復者にも支援者にもなりたくない。そんな思いが、世界を暗くしているのかもしれないが。
■ビンラーディン殺害、米大統領「正義を達成」
(読売新聞 - 05月02日 12:36)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1589401&media_id=20