[報道・教養] NHKスペシャル「巨大津波 その時ひとはどう動いたか」 / 震災対策はハードからソフトへ

2011年 社会 報道・教養 災害
[報道・教養] NHKスペシャル「巨大津波 その時ひとはどう動いたか」 / 震災対策はハードからソフトへ

NHKスペシャル「巨大津波 その時ひとはどう動いたか」を見た。

NHKスペシャル「巨大津波 その時ひとはどう動いたか」

災害発生時、人はなにを考え、どう行動し、なにが生死を分けるのか? 宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区は人口5600のうち700人の犠牲者を出した。地震発生から津波到達まで1時間以上あったのに、なぜ多くの犠牲者が出てしまったのか? NHKは住民の安否と当時の行動を地図に落とし込み、「被災マップ」と「行動マップ」を作成。そこから浮かび上がったのは、災害などの非常時に陥りがちな「心の罠」だった。
[URL] https://www.nhk.or.jp/special/onair/111002.html
2011年10月2日(日) 午後9時00分~9時49分

安全対策が油断を招く

「被災マップ」を見ると、海に近いほど津波の犠牲者が多いわけじゃなかった。閖上地区には「津波は貞山堀(貞山運河)を越えてくることはない」という思い込み(神話)があって、そのため貞山堀より陸側の住民はあまり避難せず、多くの犠牲者を出していた。

正常性バイアス

人間は避難したがらない生き物だ。異常な状況に陥っても、これは異常事態ではないと思い込むことで安心を得ようとする。そんな正常性バイアスによって、震災直後も日常的な行動をつづけることで、避難が遅れた人がいた。
一家全員が亡くなった家族のほとんどは、自宅から逃げずに津波に呑まれていた。

愛他行動

災害発生時、人間はふだんより他者を思いやる行動をする。家族や近隣の人を助けようとして貴重な時間を失って、自分の命まで落としてしまう。昔の人が「津波てんでんこ」と教えた理由を、あらためて考えるべきだろう。

同調バイアス

人間は周囲と同じ行動を取ろうとする傾向がある。避難所に集まった人々は、数が増えるにつれて機敏な行動がとれなくなる。危険を訴える声が聞こえても、みんなで無視する。脇道は空いているのに、渋滞道路で一斉に被害を受けてしまった。「赤信号、みんなで渡れば、みんな死ぬ」のだ。

ハード(インフラ)の限界、ソフト(教育)の充実を

現在、閖上地区は復興が進められている。行政は防潮堤を高くするとか、宅地を嵩上げするなど、ハード(インフラ)の強化を目指しているが、住民は懐疑的だ。どんなに安全対策を尽くしても、想定外の災害は起こりうる。それに被害の大きさはインフラの整備に比例していない。
それよりもソフト(教育)を充実させるべきだろう。災害にどう備えるか、どう行動すべきか、どんな「心の罠」があるか知っておく方が、生命と財産を守るはずだ。

震災から半年。震災関連のニュースに興味が薄らいできているが、貴重なレポートはこれから発表されていく。
あの日の緊張を忘れるのはまだ早い。

それはそうと、こういう貴重な映像資料は広く無料公開してほしい。著作権うんぬんで制限するのはあまりに惜しい。