病病看護からの帰還

2012年 生活 健康
病病看護からの帰還

風邪をこじらせ、一週間ほど寝込んでいた。

今は回復しているが、本当につらかった。毎年1度は風邪をこじらせるけど、今回はひどかった。くしゃみや鼻水はなく、ひたすら咳き込む。とりわけ、寝入りばなの咳がつらかった。高熱で意識が朦朧としてるのに、寝られない。ようやく寝付いても、喉が渇いて目が覚める。うがいして、水を飲んで、また布団に戻ると咳き込んで寝られない。つらかった。

もう1つ悩ましかったのは、嫁の質問責めだ。「なに食べたい?」「いつ食べたい?」「どのくらい食べたい?」「どんな味付けがいい?」と何度も何度も聞いてくる。こっちは頭がぼけてるし、味覚は変だし、なにより食欲がない。やむなく、「カリッとした触感で、喉ごしがいいもの」と答えると、「わけがわからない」と怒り出す。困ったもんだ。

発病3日目、嫁にも風邪がうつった。私と同じ症状で、熱を出し、咳き込んで、ぶっ倒れた。「どうだ? 食べたいものなんてわからないだろう!」と言い放ち、嫁も理解してくれたが、状況は最悪だった。
高齢者が高齢者を介護する状況を「老老介護」と言うが、「病病看護」と言ったところか。

ふたり暮らしで、ふたりとも寝込んじゃうと、どうにもならない。目が覚めて、腹が減っていたら、スナック菓子を食べる。水分を補給し、また眠る。昼も夜もない。悲惨すぎるが、食欲がないからこれで十分なのだ。欲求がないと、生活は荒んでいく一方だ。

発病7日目、私が回復する。カレーなど作ってみる。うむ。味覚があるのはいいね。嫁から再感染が怖かったが、ほどなく嫁も回復した。
回復とはつまり、味覚がもどることだった。

まぁ、なおる病気でよかった。しかし、想像してしまう。やがて私たちも歳をとって、認知症になって、慢性的な病に悩まされる、老老介護な日々が訪れるんだろうか。味覚が失われ、どうでもいい食事をつづけ、元気になる日を求めないような、末期的な状況が……。やだなぁ。

看病される喜びなどない。しかし死ぬなら、先がいいなぁ。