武道は人生の役に立つ
2012年 生活 スポーツ 政治 社会
恥ずかしながら、ウォーキング中に転んでしまった。
わずかな段差だったけど、よそ見をしてたので、まるで地面がなくなったかのような衝撃だった。大きくよろめいて、たったったとつんのめる。体勢を立て直せず、アスファルトに手をつくが勢いがありすぎたので、大きく前転して、停まった。
周囲を確認する。歩道だから安全。ぶつかった人は、いない。重篤な怪我、衣服の乱れもなし。よろし。服をはたいて立ち上がる。歩行者の注目を集めてしまったので、「いやぁ、転んでしまった」と頭をかく。緊張がほぐれ、人が流れはじめた。
ふぅ。
あらためてダメージチェック。
ひざに痛みはあるが、ズボンは破れていない。手のひらの付け根(掌底)を見ると、皮膚が裂けて、血がにじんでいた。ひりひり痛い。大根おろしにかけたようだ。
察するに、相当な勢いだったようだ。無理に手で停まろうとしたら、もっと深く裂けていただろう。あるいは、顔からアスファルトに突っ込んでいたかもしれない。前転して正解だった。
ウォーキングを再開しながら考える。
あの瞬間、とっさに前転できたのは、「受け身」を学んでいたおかげだ。
受け身とは、地面にぶつかる衝撃を軽減する方法。腕や足を先に着地させ、身体を回転させることで勢いを減らし、都合のよい姿勢で着地する。
高校時代、いろんな受け身を練習したっけ。決して得意じゃなかったけど、あの経験、あの感覚があればこそ、大けがせずに済んだ。
今年4月から、中学校で武道が必修化される。武道は柔道、剣道、相撲からの選択する。この武道必修化には、反対意見が多い。
- 武道の用具をそろえるための経済的負担がある。
- 武道の授業で怪我をする子どもが多い。
- タカ派思想のあらわれ。学内でのイジメが助長される。
もうね、武道=戦争=右翼、みたいな発想が多くてうんざりする。
私の経験から言えば、武道は人生の役に立つ。攻撃するためでなく、自分の身を守るために。私は剣道部に所属していたが、ふだんの生活で役に立つのは柔道だ。とりわけ受け身は重要である。
反対派が挙げるデータによれば、「武道学習中の事故は、野球やサッカーより多い」そうだ。しかしもし武道(受け身)を知らなければ、学校の外で怪我をする確率が増えるだろう。「受け身を知っていたから怪我を軽減できた」というデータがないので反駁しづらいが、経験的には疑いようもない。
安全な畳の上で練習した受け身の感覚は、大人になっても消えない。ふだんは忘れていても、緊急時に身体が反射する。経済的負担を気にする親は、子どもの怪我を軽減させるメリットに気づいてほしい。
さいわい、私は攻撃スキルをふるう場面に出くわしたことがないが、そんな場面になったら、剣道や柔道で学んだ感覚が役立つだろう。それは、好戦的になることとはちがう。武道に接して、戦うリスクや痛みを学んだから、戦いはなるべく避けようとする。もし武道に接したことがなければ、ゲーム感覚でケンカしてひどい目を見ていたかもしれない。
野球やサッカーと比較することはできないが、武道は人生の役に立つ。
まちがない。