ソーシャルバブル崩壊を見て思うこと

2012年 社会 Webサービス 政治
ソーシャルバブル崩壊を見て思うこと

 消費者庁が「コンプガチャ」を禁止する方針を固めたようだ。

 「コンプガチャ」はソーシャルゲームの収益の柱で、その市場規模2,500円に達するという。不況のご時世に、派手な話だ。ところが最近は、「射幸心をあおる」、「子どもが夢中になって高額請求された」といった批判が高まっていた。
 こうした風潮に押されたのか、消費者庁は「コンプガチャ」は景品表示法で禁じる懸賞に当たると判断、中止を要請することを決めた。企業が応じない場合は、措置命令が出される。
 週明けの株式市場ではDeNA、グリー、ミクシィ、クルーズ、Klab、ドリコム、サイバーエージェント、コナミなど、関連銘柄が大幅に値を下げた。失われた時価総額は3,000億円にのぼる。ニュースでは「ソーシャルバルブの崩壊」という見出しが躍るが、さもありなん。

 DeNAやグリーの躍進や、ソーシャルゲームのCMにうんざりしていた人は、この規制に拍手喝采を送るだろう。「正義の鉄槌が下された!」「ざまぁみろ♪」ってわけだ。
 しかし冷静に考えると、これでいいのかなぁ……と疑問がよぎる。

 ガチャに数百万を貢ぐことになろうとも、そんなの個人の自由だ。好きにすればいい(好きに滅べばいい)。人間には自滅する権利がある。まぁ、子どもに[5]キーを連打され、高額請求された親は憐れだが、「射幸心をあおるカラクリ」について子どもと話す機会を得たと思うしかない。
 今回の規制が意味するところは、「人間は射幸心をあおられると自制できないから、法で排除するしかない」という判断だ。消費者って、そんなに馬鹿なの? もちろん、企業はあの手この手で罠を仕掛けてくるから、ある程度の規制は必要に思える。
 だけど、宝くじは規制されない。宝くじで一等が当たる確率は、交通事故で450回死ぬ確率に等しいそうだ。確率計算ができる人は絶対に宝くじを買わない。それゆえ宝くじは、「愚か者に課せられた税金」と言われる。宝くじは法に準拠しているから問題ないの?

 先月は厚生労働省が生肉の提供を禁止した。ユッケで中毒死者が出たのは痛ましい事件だが、「焼肉酒家えびす」は倒産したし、ほかの外食産業も生肉に取り扱いに神経質になっていたところだ。それでも規制しなければならなかったの? まるで正体不明の病原菌を恐れる中世の人々のようだ。

 死者の多さで言えば、車も規制されてしかるべき。なのに規制されない理由は、まぁ、説明するまでもないだろう。消費者の安全や利益のために、規制されるわけじゃない。規制すると喜ぶ人が多いから──つまり政治的なパフォーマンスになるから──規制されるだけだ。
 馬鹿らしい。消費者が賢くなれば済む話じゃないか。
 ガチャにしろ、生肉にしろ、強制されているわけじゃないのだから。

 話はそれるが、学校で労働基準法を教えれば、雇用に関するトラブルは大きく減ると思う。それをしないのは、法律を知らない労働者の方がコントロールしやすいと、誰かが考えているからだろう。あるいは、無知のまま乗り切れるのがいい社会と思っているのか?
 私は規制より、知恵がほしい。

 もう1つ、余談。やまもといちろう氏のブログによれば、ソーシャルゲームの「被害者」が返還訴訟を起こすそうだ。そんな馬鹿な、と思うが、最近は仰天判決も多いから油断できない。そんなことに人生の貴重な時間をつぎ込むのもどうかと思うが、自分はソーシャルゲームの「被害者」だと思うような人は、そうやって稼ぐしかないだろう。