おくすり手帳は電子化しないのか
2012年 生活 健康 医療「おくすり手帳はお持ちですか?」
歯医者で奥歯を抜いたあと、私はロキソニン(感染症予防)とケフレックス(痛み止め)をもらうため、調剤薬局を訪れた。じつに4年ぶりである。そこで冒頭の質問をされて、戸惑った。
(いま持ってないのは明らかだが、家にあっただろうか?)
たぶん、ない。そう告げると、その場で作ってもらった。無料だった。
おくすり手帳の意義
飲み方や体質によっては、薬も毒になる。ごくまれなケースだが、自分が該当しないとはかぎらない。歳をとったり病気になるだけでなく、自分の体質を自分が知らない場合もある。
ゆえに、薬の服用歴を記録し、それを病院や薬局に伝えることは重要だ。
おくすり手帳の目的は4つ。
- 相互作用の防止
- 重複投与の防止
- 薬品アレルギー・副作用の防止
- 病歴・病状の推測
手帳に書き込むのではなく、処方された薬の種類、量、回数、日付、私の名前が印字されたラベルシールを貼っていく。なるほど。
東日本大震災のとき、救急現場で有効だったことから、2012年4月よりラベルシールの発行が無料化されたそうだ。知らなかった。
自分の知らない自分の話
手帳作成にあたって、体質や病歴などの設問に答える。「特記事項ナシ」と言えればいいが、私にもアレルギーはある。精密検査を受けたが、結果は「未分化」だって。なので、なにを、どう注意すればいいのかわからない。
まぁ、今回もらう薬は4年前も飲んでるから問題ない。
が......病院で検査してもらった結果をおぼえて、それを薬剤師に申告するのは、ひどく面倒だ。まちがう可能性も高い。医療機関は患者の情報をデータベースで共有してほしいよ。
おくすり手帳は電子化しないのか
おくすり手帳を携帯していれば、たとえば自分が意識不明になっても薬の服用歴を医療機関に伝えることができる。しかし手帳はかさばるし、水に濡れたら駄目になる。
薬の服用歴をはじめ、体質や病歴などの医療情報は、ICカードに記録するか、運転免許証からデータベース照会できるようにしてほしい。
世の中には、個人情報を政府にあずけることに拒絶反応を示す人がいる。そういう人は、メリットも否定するのだろうか? 人命に直結するメリットより大きなデメリットとはなにか? 紙の手帳なら、そのデメリットは発生しないというのか?
ナチスドイツの例もあるから、警戒すべきことなのはわかる。しかしそれを踏まえても、効率化を邪魔しているようにしか見えない。
おくすり手帳を電子化する話は何度か耳にするが、いまだ実用化されていない。限定的な例があるだけだ。
技術的問題は解決できても、政治的問題は解決できない。
これがITの限界か。
推進しているのはどこ?
しかし政府のやることも抜けている。私がもらった「お薬手帳」は松葉色。医薬品管理センターが情報提供している「おくすり手帳」は水色だった。このほか、「薬識手帳」という呼び名もあるそうだ。どうして名前や規格を統一できないのか?
手帳を読んでみたが、薬の飲み方や簡単な検査値はあるけど、手帳についての問い合わせ先が載っていない。最寄りの薬局や病院に聞け、ということか? しかし推進している団体がわからないのは、どうにも気持ち悪い。
紙の手帳さえ満足に運用できないなら、データベースなど任せられない。
むやみに高くて、不便で、穴だらけのシステムになるだけだ。
いろいろ事情はあるんだろうけど、なんとかならんもんかねぇ。