町内会って大変なのね
2012年 生活 社会おふくろから聞いた話。
実家の町内会が、防災対策をすることになって、家族構成や緊急連絡先をまとめようとしたが、頓挫したらしい。個人情報が詰まった帳簿は、それ自体が犯罪に利用される恐れがあるからだ。考えてみると、いろいろ難しい話だと思った。
ゼロからの地縁
私の実家は、千葉県千葉市の新興住宅地にある。埋め立て地だら、昔から住んでいる人はいない。全住民がよそ者というわけだ。一家が引っ越したのは1981年(昭56)だから、もう30年前か。それだけ時間が経つと、地域の結びつきもそれなりに生じるようになる。
つまり、それだけのトラブルを乗り越えたとも言える。夏祭りをどう開催するか。町内会の仕事をいやがる夫婦をどう説得するか。空き巣被害にどう立ち向かうか。そうしたトラブルを乗り越えることで、地域の結びつきは強まっていくのだ。
試される地縁
しかし東日本大震災ほど大きなトラブルはなかった。町内では家屋の倒壊や火災こそなかったが、地割れや陥没、隆起、断水といった被災があった。市や県、国が対応すべきこともあるが、まず最初に行動すべきは町内会になる。が、なにをどうしていいやらわからず、担当者は苦労されたらしい。
1年が経って、防災対策を検討することになった。東日本大震災クラスの災害がふたたび起こらないと、だれが言えるだろう? 準備すべきことは多い。
まず困ったのは、安否確認だった。となりの家が静かになったのは、どこかに避難したせいか、箪笥の下でつぶれているせいか、見分けがつかないのだ。家を空けるときは町内会に声をかけてもらいたいが、その余裕がないときもあるあろう。なので、緊急連絡先がわかると助かる。
だがもちろん、そんな帳簿は作れなかった。
空き巣や訪問販売などに利用される恐れがあるからだ。
設問に答えてくれたのは何人かの高齢者のみ。
「何日か姿が見えなかったら、1階の窓を破って入ってください」
と書いた人もいたそうだ。
失うものがなくなると、人を信じるハードルが下がるのかもしれない。
昔のような地縁は望めない
私は実家を出て久しいから、町内会の様子はわからない。ゼロからスタートした土地とはいえ、30年でそれなりの結びつきはできたと思うが、昔のような地縁は作れなかった。
たとえば火事があったとして、
「あの家には寝たきりのおばあちゃんがいる!」とか、
「息子さんは昼間は部活動でいないはず」とか、
「親戚が東北にいるって聞いてます」とか、消
防士や警察に答えられる人は少ないだろう。
しかしそれは仕方ないことだ。結びつきが強すぎる土地は、それはそれで息苦しい。
私の友人は、隣人が勝手にあがりこんで、「雨が降ったから洗濯物を取り込んでおいたよ」と言われる地方がいやになって、上京した。その気持ちはわかる。
私がいま住んでいるアパートにも、町内会は存在しない。町内会費を求められ、持ち回りで仕事をやらされるような土地には引っ越さないだろう。隣近所の目を気にせず、個人の自由を謳歌する。私はそういう生き方を選んだから、対価として孤独死することになっても、仕方ないだろう。
防災対策のために、在宅情報や緊急連絡先を集める?
そんなの、やる前から失敗することがわかりそうだが、わかっていてもやらなければならないことが、町内会にはあるそうだ。
うーん。町内会ってのは大変だ。