COOPで「助けて」と叫ぶ練習を / Left 4 Dead 2

2014年 娯楽 ゲーム
COOPで「助けて」と叫ぶ練習を / Left 4 Dead 2

 友人にすすめられ、『Left 4 Dead 2』というゲームをやることになった。

 私にとってゲームは「ひとりで楽しむもの」だから、オンラインゲームやマルチプレイは興味がない。しかしまったく経験がないわけでもなかったから、軽い気持ちで参加したが、ひどい目にあった。ゲームをやるたび消耗しきって、倒れそうになる。
 いろいろ気づくこともあったので、日記を残しておく。

Day0 どんなゲームか

 『Left 4 Dead 2』(以下、L4D2)が発売されたのは、2009年。すでに5年前だが、グラフィックや機能に驚嘆する。私が最新タイトルを知らないせいもあるが、PCのスペック的にも、枯れたタイトルはありがたい。
 現在のSTEAM価格は1,980円だが、キャンペーンで495円で購入できた。500円でこれだけ遊べることに、罪悪感すら感じる。これじゃ最新ゲームは売れないだろう。

 『L4D2』は、4人の生存者がゾンビがあふれる町から脱出するゲーム。
 1人でも遊べるが、複数プレイヤーによるCOOP(協力プレイ)を前提に設計されている。ソロプレイは、COOPを成功させるための「練習」みたいなものだ。

 購入時、私は
「ソロプレイを十分楽しんでから、ときどきオンライン」
 と思っていたが、友人たちは、
「COOPをやらずにどうする! 早く来い!」
 と怒るので、接続することにした。

Day1 声が届かない

 私のオンラインゲーム経験は、『バイオハザード アウトブレイク』(2003)、『METAL GEAR ONLINE MGS3』(2005)、『Minecraft』(2010)の3つだけ。どれも知らない人と、言葉を交わさずプレイした。しかし『L4D2』は大量のゾンビが、四方八方から、猛スピードで襲いかかってくるから、ボイスチャットなしでは連携できない。

 ヘッドセットは持っているが、ふだん使ってなかったから、接続に苦労した。みんなの声が聞こえなかったり、私の声が届かなかったり、ノイズが入ったり、急に切れたり......。
 私は通話できなくてもいいやと思っていたが、通話できないと孤立して死んでしまう。1人死ぬと、チームは壊滅し、クリアできない。
「適当についていきますから、無視してください」
 というわけにはいかないのだ。

 思っていた以上に意思疎通が必要なゲームだった。いや、メンバーが意思疎通しないと突破できないよう設計されている。こんなゲームがあったのか。

 『L4D2』付属のボイスチャット機能から、Skypeに切り替えると、安定して通話できるようになった。声が聞こえると、はぐれたり、もたつくことが減った。
 しかし「聞く」だけでなく、「話す」必要もあった。

Day2 声が出ない

 『L4D2』は、孤立すると死ぬ。1人ではどうにもならない場面があるのだ。だから困ったときは助けを呼ぶ。手が忙しくても、声を出せるはずだが......驚くほど声が出ない。気のおけない友人同士なのに、声が上ずってしまう。妙な緊張感がある。

 「助けて」と言うことに抵抗があるのか? ゲームで助けてもらうことに、なんの躊躇がいるだろう? 頭ではわかっていても、声が出ない。

 大量のゾンビに囲まれると、危機感で頭がいっぱいになる。ホラー映画でよく女性が悲鳴を上げるけど、本当に怖い目にあったら声が出ないと思う。ふだん、助けを求めることに慣れてない人は、無言で死ぬことになる。

 人間、思うほど助けを呼べない。

 ほんと、注意した方がいい。

Day3 声が聞こえない

 戦闘が激化すると、視野が狭くなり、音声が聞こえなくなる。友人たちが「下がれ」とか「治療しろ」と叫んでも、対応できない。声は聞こえているが、脳に達しないのだ。

 死ぬと緊張が途切れ、聞こえていた言葉の意味がわかる。

「下がれと言ったのに、聞こえなかったのか?」
「聞こえてた」
「だったら返事しろよ」
「頭がまわらなかった」

 ほんと、笑っちゃうほど余裕がなくなる。

 まぁ、このあたりは「慣れ」で解決するだろう。「慣れ」とは、刺激に対する反応を自動の回路にすることだ。何回か遊んだ今では、「酸!」と言われただけで飛び跳ね、「チャージャー!」と言われただけで横移動できる。思考せず、反応できるわけだ。

 裏を返せば、まだ回路ができてない、はじめて直面する危機的状況では、人間はたやすく思考力を失い、周囲が見えなくなる。現実の人生ではそうそう体験できないし、体験したくもないが、このゲームはそれを味あわせてくれる。

Day4 過去の自分が見える

 プレイするたび回路ができ、これまで見えなかったものが見え、聞こえなかったものが聞こえてくる。それは霧が晴れるような感覚で、けっこう楽しい。

 そして、以前の自分がどれほど混乱していたか、わかるようになる。同じマップに再挑戦すると顕著だ。「どうしてこれに気づかなかったのか?」「ここはこうなっていたのか!」と驚かされる。

 友人2名は私よりゲームに慣れているから、私の混乱がよくわかるようだ。つまり過去の自分が見えるわけだ。そして私も、彼らも、未来の自分から見て、現在の自分の足りないところはわからない。

 当たり前の話ばかりだが、協力プレイであればこそ気づけることも多い。

 このほか、「新兵は敵に突っ込む」「動くものを撃つ」先頭に立つと景色が変わる」「ピンチになる前に合図できない」「仲間の失敗を追求しても得られるものはない」といった教訓があるが、そのへんはまた今度にしよう。