独機墜落事故で問われる人間という部品の信頼性

2015年 社会 思考実験 社会
独機墜落事故で問われる人間という部品の信頼性

 24日、ドイツのジャーマンウイングス旅客機9525便がフランスのアルプスに墜落した。

 30日現在、事故原因は判明してないが、「精神を病んだ副操縦士による意図的な墜落」とする説がきわめて大きく扱われている。医師の診断書や元恋人の証言など、副操縦士に不利な状況証拠が次々に見つかっており、数の上では支配的だ。いささか報道が先走りすぎている気もするが、マスコミに冷静さを求めても詮無きことか。
 今後の調査で副操縦士の無実が証明されるかもしれないが、それでもパイロットの精神状態への不安は根強く残るだろうな。

 ボイスレコーダーには、コックピットから閉めだされた機長が斧でドアを破ろうとする音が記録されていたとか。だとしたら、こわい話だ。9.11テロによって、コックピットは堅牢に作りなおされた。その結果、ひとたび制圧されると打つ手がなくなってしまったわけだ。
 欧州航空安全庁(EASA)は27日、操縦室に常に2人以上の人員がいることを義務づける規則導入を求める「暫定勧告」を出した。まぁ、2人同時におかしくなる可能性は低いが、まったくないとは断言できない。

 航空会社は乗客の暴力だけでなく、操縦士の精神状態まで疑うことになった。しかし副機長に異常な兆候は見られなかったし、いくつもの試験もパスしている。正常なふりができて、冷静に機体を墜落させる狂気が存在するなら、事前に発見、除去できるとは思えない。

 人間なら気持ちが落ち込むこともある。迷うことがある。しかし気持ちが揺れただけで仕事を失うとしたら、操縦士のなり手がいなくなる。あるいは操縦士は、いかなる状況でも気持ちが揺れない異常者(=免罪体質)ばかりになる。それはそれで怖い。

 人間の不完全性は、除去不可能な危険として受け入れられてきた。しかし法が整備され、科学が発達したことで、いよいよ本格的に除去されるかもしれない。
 すなわち...

  1. 不完全な人間を識別し、取り除く。
  2. 人間にたよらず、機械化する。

 ああ、なんだかなぁ。

PSYCHO-PASS (2012)

 近未来、人間のあらゆる心理状態や性格傾向を数値化する「シビュラシステム」が開発された。これにより犯罪を起こす可能性が高い人間は、たとえ犯罪を実行していなくても、「潜在犯」として逮捕、隔離された。「シビュラ」は人間をストレスから開放し、理想的な社会を作るはずだった。

風の谷のナウシカ (1982)

 遠い未来、戦争を止められなくなった人類は、完全中立な裁定者として人工の神──巨神兵を製造する。しかしそれでも人間は愚行をやめず、結果、巨神兵は7日間で産業文明を焼きつくしてしまう。

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