[COOP記] 甥っ子がマルチプレイで泣いた
2015年 娯楽 ゲーム 甥っ子月曜の昼、ゲーム仲間から連絡があった。
「今夜空いてるから、甥っ子くんとマルチプレイしてもいいよ」
甥っ子とのマルチプレイは週1回、水曜日だから、特別開催である。そのことを実家にメールしておくと、午後4時、興奮した甥っ子からSkypeコールがあった。
「今夜、ゲーム、やりたいです!」
「あいよ。20時からね。宿題を終わらせておくように」
「はい!!!!!!!」
あとで聞いたところによると、甥っ子はオジサンたちとのマルチプレイを大いに気に入って、「水曜が楽しみ」「もっと遊びたい」と漏らしていたそうだ。このあいだは私にコールできたが、やはり遠慮はあったらしく、こうやって誘われたことで有頂天になった。
ところが20時、コールに出てみると甥っ子は号泣していた。
「ううう、うううううううううう」
「どうした?」
「宿題が(うううううう)終わらなくて(ひっくひっく)、今夜は(ひっく)ゲーム、できません、うううううう、あうあうあああああああ(ひっく)」
嗚咽がひどく、聞き取るのに苦労した。
たぶん私が死んでも、ここまで泣いてくれないだろう。
「そっか。じゃ今日は不参加で、また水曜日にね」
私は冷徹に切断した。ゲーム仲間に事情を説明すると、
「宿題が終わるまで、待ってやったらどうだ?」と温情を求める声もあったが、
「甘やかすわけにはいかん」と、基本方針を伝えた。
あとで聞いたところによると、帰宅した甥っ子はマルチプレイができると興奮し、「宿題はすぐ終わる」と言って、ゲームの練習をはじめたらしい。しかし宿題は終わらなかった。どうしても解けない割り算が2つ残った。集中力もなかった。
「ゲームが終わったらやる」とか、「この宿題はやらなくていい」とグズったが、祖母は認めず、自分でオジサンに今夜はできませんと伝えなさいと命じた。
Skypeを切ったあとは、20分ほど、丸まって泣いていたらしい。祖母が話しかける。
「オジサンはもうゲームしないって、言ったの?」
「ううん、水曜に、やってくれるって」
「それじゃ水曜は参加できるよう、宿題を終わらせないとね」
「やる! 必ずやる!」
と言って、復活したそうだ。
しかし甥っ子の悔しさは、祖母の想像を超えていた。「次は必ず、次は必ず」と繰り返し、「悔しさをプールにぶつけてきた」と、わけのわからぬ話をしたらしい。
ひょっとしたら、これまでの人生でもっとも悔しい出来事だったのかもしれない。
その話をゲーム仲間にすると、
「わかる、わかるわぁ!」
「悔しさをバネに成長するんだな」
と感動された。そんなものか?
メンバーの都合でセッションは木曜夜に移された。
そして当日──。
「おううりゃああああああああああああああああ!」
「ひいい、ジョッカられた。助けてえええ」
「グレポン、これで勝つる! 行くぞおおお!」
甥っ子は、不安になるほど興奮していた。ずっとしゃべりまくりで、一部、私たちの知らないスラングも混じっていた。ぐいぐい前進していくが、前回ほど死なない。やばい。
最終局面。ビルの屋上でゾンビの大群と戦っていたが、私はあっけなく死亡。ふたたび甥っ子はゲーム仲間たちとヘリコプターで脱出した。
「なんでそこで死ぬかなぁー」
「オジサンは成長しないねー」
なんというか・・・この展開はやばい気がする。
大人とのマルチプレイは甥っ子の情操教育にいい影響を与えると思っていたが......だ、大丈夫か? マルチプレイはもう終了した方がいいかな?