犬神家の一族 / 稲垣吾郎の金田一耕助シリーズ#1 Murder of the Inugami Clan

2004年 日本ドラマ 2ツ星 #金田一耕助

空気が読めない探偵と、空気が読めない演出

「稲垣吾郎の金田一耕助シリーズ」の第1弾。過去作品をなぞるのではなく、新たなイメージを目指したようだ。すなわち、知能は高いが空気が読めない探偵である。

事件の謎に興味を示し、依頼人なしで現地に駆けつける姿は、ぶっちゃけ変質者である。また親族を殺された当事者がいる前で、「おもしろい事件」と言ってのける神経もすごい。しかし演出が中途半端で、キャラクターが確立されなかった。金田一がおかしなことを言ったら、周囲の人に叩かれ、なぜ怒るのかわからないと返すところまでがセットだろう。なのに、だれも指摘しないから金田一が浮いている。脚本も、稲垣吾郎の演技も悪くないが、演出がコンセプトを理解していなかったようだ。

「斧」の見立て殺人を、逆さまに呼んだ佐清の「ヨキ」と解いたのはいいが、果たして松子にその意思があっただろうか? 金田一が得意げに謎を解いてしまったため、彼の知性に疑問符が付いてしまった。ここも演出がすべってる。

クライマックスで佐兵衛翁の亡霊が飛び出してくるのもやりすぎ。映像的には笑えるが、雰囲気はぶち壊しだ。たなびくマントもそう。CG技術を自慢したいのはわかるが、使い所をわきまえてくれ。

シリーズ第5弾まで見たけど、脚本家と現場演出の乖離はなおっていない。そのため稲垣吾郎は空気が読めない男を悲しく演じつづけている。このズレは本当にかわいそうだ。

金田一耕助
石坂浩二
渥美清
古谷一行
  • 名探偵・金田一耕助シリーズ
  • 1.本陣殺人事件(1983)
  • 2.ミイラの花嫁(1983)
  • 3.獄門岩の首(1984)
  • 4.霧の山荘(1985)
  • 5.死仮面(1986)
  • 6.香水心中(1987)
  • 7.不死蝶(1988)
  • 8.殺人鬼(1988)
  • 9.死神の矢(1989)
  • 10.薔薇王(1989)
  • 11.悪魔の手毬唄(1990)
  • 12.魔女の旋律(1991)
  • 13.八つ墓村(1991)
  • 14.悪魔が来りて笛を吹く(1992)
  • 15.女怪(1992)
  • 16.病院坂の首縊りの家(1992)
  • 17.三つ首塔(1993)
  • 18.迷路の花嫁(1993)
  • 19.女王蜂(1994)
  • 20.悪魔の唇(1994)
  • 21.悪魔の花嫁(1994)
  • 22.呪われた湖(1996)
  • 23.黒い羽根の呪い(1996)
  • 24.幽霊座(1997)
  • 25.獄門島
  • 26.悪魔の仮面(1998)
  • 27.悪霊島
  • 28.トランプ台上の首(2000)
  • 29.水神村伝説殺人事件(2002)
  • 30.人面瘡(2003)
  • 31.白蝋の死美人(2004)
  • 32.神隠し真珠郎(2005)
鹿賀丈史
豊川悦司
上川隆也
稲垣吾郎

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