[レビュー1992年07月18日に発表された 

走れメロス! Run Melos!

文学・古典・童話
更新日:2018年07月19日(木) 17:45 [Edit]

だれがメロスの心を知るだろう

言わずとしれた太宰治の原作を独自拡張したアニメ映画。冒頭で結末を見せちゃうので、途中脱落はないとわかっていても、終盤は興奮した。死ぬために走る。わかりきった展開なのに、なにもわかってなかった。それは、すごいことなんだ。

ライサが微妙な位置にいる。ディオニシウス2世に抵抗し、セリヌンティウスを愛し、メロスを死地に誘う。死刑囚への接吻は、決して聖女の証しではなかった。けっこう生々しい人物なのだが、掘り下げは浅かった。セリヌンティウスとメロスを天秤にかける罪悪感を表現してほしかった。

じつは劇中、だれもメロスを止めようとしない。走るメロスに手を貸すことは、彼の死を望むこと。フリューネ夫人も、メロスの生は望んじゃいない。事情を知れば、妹や村長あたりが止めたかもしれないが、そのへんのヤリトリは不要とみなされたようだ。メロスの孤独感を思うと、やりきれない。だれがメロスの心を知るだろう。

意外に考えさせる物語だった。

今敏
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