マレーナ Malena

2000年 外国映画 5ツ星 ドラマ 主人公は子ども 戦争

どうしようもなく少年だった

『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)のジュゼッペ・トルナトーレ監督作品。在りし日の情景の美しさも醜悪さもあまさず描いている。その視線に深い愛を感じる。

印象に残ったシーンは3つある。

1つ目は、少年レナートがマレーナの夫に託した手紙に名前を書いたこと。現実がゆがむほどマレーナを愛しておきながら、彼女が困っているときに行動しなかったくせに、今さら未練を残すのか。その無力さに泣けた。

2つ目は、少年レナートがあっさり彼女を作ったこと。あれほど未練を残しておきながら、切り替えが早すぎる。言葉を失ってしまった。

3つ目は、シチリアの夫人たちがマレーナを受け入れたこと。あれだけのことをしておきながら、水に流してしまうのか。そしてマレーナも心を開いている。隻腕の夫がシチリアに帰ると決めたとき、マレーナは反対しただろうか、夫に従っただろうか。そんなことも想像できないほど、マレーナの内面は描かれていない。ただ、ふたりが深く愛し合っていたことはわかる。少年が入り込むすきなど、まったくなかった。

少年の愛は一気に深まるが、一気に浮かび上がる。それは決して悪いことじゃない。マレーナは最後までレナートの気持ちに気づかなかった。しかしレナートは生涯忘れない。馬鹿馬鹿しいけど、これでいい。これでいいんだ。人生の素晴らしさを感じる作品だった。

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