迷路荘の惨劇 / 上川隆也の金田一耕助ファイル#1 The Tragedy of MaZee Inn | Meiro-so no sangeki

2002年 日本ドラマ 4ツ星 #金田一耕助

小悪魔的な金田一

古谷版(1978)でストーリーは理解していたが、展開が大きく異なるので驚いた。ポイントがうまく整理されている。キャラクターも魅力的で、おもしろかった。

犯罪の順序や犯人より、キャラクターの印象がまるでちがう。古谷版と比べると、篠崎慎吾をイケメン(三橋達也)からブサイク(六平直政)に変えたのは見事。強欲傲慢で、いかにも犯人らしく見える。また井川刑事(火野正平)が横柄なので、うまいぐあいに疑惑が分散された。
静馬の存在が強調されたことで、現在と20年前がうまく噛み合った。静馬は生きているのか? だれかが装っているのか? なんのために? 静馬が注目された結果、「単独犯に見せかけた複数による、意図せぬ競演」というキモがよく見えるようになった。

倭文子は美人だけど、さっぱり目立たない。しかし最後に見せ場が待っていた。彼女の輝きは、対となる六平直政の存在によるところが大きい。毒婦と知りつつ身をゆだねてしまう歓び。等々力警部が言うとおり理解しがたいが、圧倒されてしまう。

いろいろ新鮮だが、最大の魅力は金田一耕助(上川隆也)であろう。純朴な青年に見えるが、話を聞き出すのがやたらうまい。引っかけたり、反対しても、相手と衝突しない。すごいコミュニケーション能力だ。等々力警部との関係もおもしろかった。警部が熱望した祇園祭は切り捨ておきながら、自分の迷宮探検には付き合わせる。金田一は終始一貫して自分の興味本位で動いており、警部はいいように使われているだけ。本人もそう気づいているのに、やめられない。
金田一と等々力、井川の3人で歩きながら推理を話すシーンもよかった。井川刑事はアクが強すぎて、わずらわしい存在だったけど、いつの間にか金田一に魅了され、ファンになっている。恐ろしい。金田一は倭文子と同じ、魔性の青年だ。

上川隆也の金田一耕助は素晴らしかった。2作で途切れてしまったのは残念でならない。

金田一耕助
石坂浩二
渥美清
古谷一行
  • 名探偵・金田一耕助シリーズ
  • 1.本陣殺人事件(1983)
  • 2.ミイラの花嫁(1983)
  • 3.獄門岩の首(1984)
  • 4.霧の山荘(1985)
  • 5.死仮面(1986)
  • 6.香水心中(1987)
  • 7.不死蝶(1988)
  • 8.殺人鬼(1988)
  • 9.死神の矢(1989)
  • 10.薔薇王(1989)
  • 11.悪魔の手毬唄(1990)
  • 12.魔女の旋律(1991)
  • 13.八つ墓村(1991)
  • 14.悪魔が来りて笛を吹く(1992)
  • 15.女怪(1992)
  • 16.病院坂の首縊りの家(1992)
  • 17.三つ首塔(1993)
  • 18.迷路の花嫁(1993)
  • 19.女王蜂(1994)
  • 20.悪魔の唇(1994)
  • 21.悪魔の花嫁(1994)
  • 22.呪われた湖(1996)
  • 23.黒い羽根の呪い(1996)
  • 24.幽霊座(1997)
  • 25.獄門島
  • 26.悪魔の仮面(1998)
  • 27.悪霊島
  • 28.トランプ台上の首(2000)
  • 29.水神村伝説殺人事件(2002)
  • 30.人面瘡(2003)
  • 31.白蝋の死美人(2004)
  • 32.神隠し真珠郎(2005)
鹿賀丈史
豊川悦司
上川隆也
稲垣吾郎

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