悪魔の手毬唄 (石坂浩二#2) Akuma no Temariuta | The Devil's Ballad

1977年 日本映画 4ツ星 #金田一耕助

恐るべきは岸恵子の魔力

市川崑の描く金田一耕助は、いつも現地に知り合いがいない「孤独な来訪者」として描かれる。しがらみが招いた悲劇を解決できるのは、しがらみのない人間だからだ。
しかし本作は例外として、知己として磯川警部(若山富三郎)が登場する。磯部の私的な依頼に、金田一は恐縮し、礼金を固持する。一連の流れは金田一の人柄をよくあらわしており、好感がもてる。また磯川が青池リカに寄せる想いも、静かだが力強い。磯川は多くを語らないが、すごい存在感だ。

強烈なのは、青池リカを演じる岸恵子。本作の殺人シーンやトリックはおもしろいものの、中年女性による犯行としてはリアリティに欠ける。老婆に化けて捜査をあざむき、なんの罪もない知り合いの娘を殺し、その死体をもてあそぶ。理知的でありながら残忍。繊細にして大胆。こんな犯行を、誰ができるだろう?
しかし、そう、この青池リカなら、やりかねない。彼女がやると決めたなら、誰に気づかれることなく、やり遂げてしまうだろう。不埒な男を愛してしまった女の末路。岸恵子の演技力がなければ、この映画は成立しなかった。

トリックに無理があるのに、完成度が高い。後年の映像作品と比較すると、いかに本作が計算されていたかわかってしまう。おもしろかった。

金田一耕助
石坂浩二
渥美清
古谷一行
  • 名探偵・金田一耕助シリーズ
  • 1.本陣殺人事件(1983)
  • 2.ミイラの花嫁(1983)
  • 3.獄門岩の首(1984)
  • 4.霧の山荘(1985)
  • 5.死仮面(1986)
  • 6.香水心中(1987)
  • 7.不死蝶(1988)
  • 8.殺人鬼(1988)
  • 9.死神の矢(1989)
  • 10.薔薇王(1989)
  • 11.悪魔の手毬唄(1990)
  • 12.魔女の旋律(1991)
  • 13.八つ墓村(1991)
  • 14.悪魔が来りて笛を吹く(1992)
  • 15.女怪(1992)
  • 16.病院坂の首縊りの家(1992)
  • 17.三つ首塔(1993)
  • 18.迷路の花嫁(1993)
  • 19.女王蜂(1994)
  • 20.悪魔の唇(1994)
  • 21.悪魔の花嫁(1994)
  • 22.呪われた湖(1996)
  • 23.黒い羽根の呪い(1996)
  • 24.幽霊座(1997)
  • 25.獄門島
  • 26.悪魔の仮面(1998)
  • 27.悪霊島
  • 28.トランプ台上の首(2000)
  • 29.水神村伝説殺人事件(2002)
  • 30.人面瘡(2003)
  • 31.白蝋の死美人(2004)
  • 32.神隠し真珠郎(2005)
鹿賀丈史
豊川悦司
上川隆也
稲垣吾郎

ページ先頭へ