復讐の女神 / ミス・マープル (8/12) Miss Marple / Nemesis

1987年 海外ドラマ 4ツ星 探偵 推理 @アガサ・クリスティ

「だから私に頼んだのよ。誰が相手でも、容赦なく犯罪を暴くから」

原作未読。ドラマの流れを整理してみる。

奇妙な依頼

マープルの友人であり富豪のラフィール氏が亡くなった。マープルに大金が贈られるが、その条件として、あるバスツアーに参加して調べ物をしてほしいとのこと。なにを調べればいいのかわからない。

ショールかなにかを編んでいらっしゃる貴女を想像しています。それをお続けなる方をお選びになるなら、やむを得ません。しかし正義のために一肌脱ごうとのお気持ちがあるなら、関心をお持ちいただけるでしょう。
覚えておいてですか。正道を水のように流れさせよ。正義を永遠に流れる河のように。

ラフィール氏にはマイケルという放蕩息子がいた。ヴェリティという女性と婚約するが、彼女は絞殺され、その犯人として逮捕される。証拠不十分で釈放されたが、新たな証拠が見つかれば裁判が再開する。
礼金はツアー終了後、もしくはマープルが「成功した」と認識した時点で支払われる。
ラフィール氏が依頼したのは事件の解決ではなく、正義をなすこと。マープルが見過ごすと言うなら、見過ごしていい。その判断──裁きを託したのだ。
マープルは、名付け子のライオネルとツアーに参加した。

  • マープル ... 素人探偵。
  • ライオネル・ピール ... マープルの名付け子。ツアー同伴者。
  • ジェイソン・ラフィール ... 富豪。『カリブ海の秘密』でマープルと知り合い、浸水するようになった。
  • マイケル・ラフィール ... ラフィールの放蕩息子。浮浪者のような放浪生活を送っている。相続の条件として、ラフィール邸に住むよう指示されるが拒否する。
  • ヴェリティ・ハント ... 善良な女性。マイケルを更生させ、恋に落ち、婚約するが、殺された。

歴史的館と庭園ツアー

ツアーのガイドや乗客はラフィール氏に手配されていた。マープルは自分を監視する客たち(クックとバロー)に気づくが、目的がわからない。
乗客のテンプルと親しくなる。テンプルはヴェリティの教師であり、事件の真相を知っているようだが、「ヴェリティは愛されたため殺された」とだけ言った。
ヴェリティを愛したのはマイケル。しかしマイケルが犯人なら、口をつぐむことはない。

  • マッチ ... ツアーガイド。マープルに好意的かつ協力的。
  • ミス・エリザベス・マーガレット・テンプル ... 乗客。ファローフィールド校の元校長。ヴェリティを教育した。事件をよく知る。
  • ワンステッド教授 ... 乗客。病理・心理学者。
  • ミス・クック ...乗客。マープルを監視する若い女性。ラフィールが手配したマープルのボディガード。
  • ミス・バロー ...乗客。若い女性。ミス・クックの連れ。

ブラッドベリースコットの三姉妹

バスはアビーディーシスに到着した。かつてラフィール氏とマイケル、ヴェリティが住んでいた土地だ。
マープルは旧領主邸に住むブラッドベリースコットの三姉妹に招待される。これもラフィール氏の手配だった。三姉妹は没落貴族の末裔で、長女(クロチルド)と三女(アンシア)がヴェリティの親権者であった。ふたりはヴェリティを愛し、マイケルを嫌悪していた。

  • クロチルド・ブラッドベリースコット ... 長女。没落した一族の末裔。ヴェリティを溺愛していた。
  • ラヴィニア・グリン ... 次女。結婚して旧領主邸を出たが、夫が死んで戻ってきた。姉、妹と少なからず距離感がある。
  • アンシア・ブラッドベリースコット ... 三女。

テンプル殺害

テンプルは意を決し、なにか手紙を書くと言っていた。直後、教会で殺された。前後して不審者が目撃される。
なぜ犯人は目立つ格好をしたのか?

騒動を契機に、ワンステッド教授が自身もラフィール氏に依頼され、ツアーに参加していたことを明かす。事件当時、教授はマイケルを精神鑑定して、正常と診断していた。
テンプルの葬儀にブラバゾン副司教が参列する。ブラバゾンはヴェリティとマイケルを知っており、ふたりとも善良で、愛し合っていたと証言した。
マイケルは更生していた。ヴェリティを殺す動機があるのは誰か?

ヴェリティは絞殺され、死体は溝に捨てられた。顔はめちゃめちゃで、クロチルドがヴェリティと確認した。ヴェリティ殺害時、ノラという女性が行方不明になっていた。ノラはヴェリティと親しかった。ヴェリティの墓は質素で、放置されていた。クロチルドは庭の薔薇をよく見ている。アンシアが古着を寄付した。

殺人事件が起こったことでツアーは解散となった。
マープルは謎を解いた。

  • ノラ・ブロード ... マイケルと交際していた若い女性。ヴェリティ札が事件のあと、行方不明になった。
  • ブラバゾン副司教 ... フィルミンスター在住。ラフィール氏の手配で招かれた。マイケルとヴェリティがよい夫婦だったことを証言する。

真相

マイケルは荒くれ者だったが、ヴェリティの愛で更生した。親権者クロチルドは認めることができず、ヴェリティを殺害し、死体を庭に埋めた。代わりにノラを絞殺して、ヴェリティの死体と証言した。ヴェリティの墓にいるのはノラだから、質素で放置されている。

テンプルはクロチルドに自首を促したが、クロチルドに殺害された。派手は服でマイケルの犯行に見せかけた。衣装は寄付した。

同じく真相に気づいたマープルも殺害しようとするが、クックとバローに阻止された。観念したクロチルドは毒をのみ、ヴェリティの墓の上で死んだ。
マイケルはヴェリティの死をふっきり、紳士として遺産を相続した。

ありがとう ミス・マープル。私のネメシス。
またお会いしましょう。
敬具 ジェイソン・ラフィール

疑問/雑感

三姉妹にとってラフィールは、殺人犯の父親。事件後も交友があるのは不自然だし、マープルをもてす義理もない。

マープルがアンシアが郵送したものに注目した理由がわからない。教授、副司教の話を聞いて、マイケルの無実を確信したとしても、三姉妹を疑う根拠にならない。

ヴェリティやノラは顔が映らないため、イメージしづらい。ノラの母親が、ヴェリティ殺害事件について口をつぐむ理由がわからない。
顔がない死体で、同時期に背格好がよく似た娘が行方不明になったのに、鑑識がずさん。母親も「まさか」と思わなかったのか?
事件の情報が少なく、あいまいで、不自然なため、推理を組み立てられない。

テンプルはどうしてクロチルドの犯行に気づいたのか? なぜ沈黙していたのか? なぜ今さら自首をうながしたのか?
ラフィール氏は事件関係者としてテンプルを招いたはず。ラフィール氏はテンプルがなにか知っていると考えていたのか? テンプルを刺激する仕掛けを用意しておけば、おもしろかったのに。

ラフィールはマープルの行動で犯人が刺激され、狙われる可能性を予見していた。だから護衛をつけたわけだが、マープルに伏せておく理由がない。

マイケルは出番が多いわりに心情が描かれない。容疑者だから伏せておきたいなら、最後まで正体を見せなくていい。ヴェリティを失った悲しみから浮浪者になり、犯人が逮捕されたことで区切りをつけ、更生した・・・という流れのようだが、演出不足で唐突感がある。
マイケルはヴェリティの亡骸を確認しなかったのか? クロチルドの歪んだ愛情に気づいてなかったのか? 犯人への憎悪はなかったのか? わからない。

教授が副司教にマープルを紹介するセリフがよかった。

教授:会っていただきたい人がいるんです。あの方です。ラフィールさんの私立探偵、復讐の女神、ネメシス。おだかや夫人に見えるでしょ。見事なカモフラージュぶりでしてね。というのは、一面では外見のとおりなんです。噂話が好きな田舎のおばあさん。ところが非常に論理的でしてね。しかも考察力がずば抜けています。おまけに決して、あきらめない人です。
副司教:お話するのが楽しみです。

裁きを託す

ラフィール氏は息子の潔白を信じられなかったのだろう。婚約者を殺したとしても、事情があったのではないか? 死期を悟ったラフィール氏は、マープルに裁きを託した。潔白なら潔白と、そうでないなら裁判へ、見過ごすなら見過ごす。プロットがたまらない。
しかしラフィール氏の思いはまったく描かれない。最後の手紙を読むと息子の潔白を確信していたように見えるが、それなら事件解決を依頼すればいい。プロットと演出が噛み合ってない。

バスツアーに参加しながら、調査すべき「事件を探す」という切り口もおもしろい。しかし乗客のうち注意すべき人物はわずか。訪問地も関係ないところばかり。ツアーというアイデアを活かせてない。おまけに途中で解散するから、ゴールのカタルシスもない。

『Woman's Realm』があったなら

クリスティは『カリブ海の秘密』、『復讐の女神』につづく『Woman's Realm』(女の領域)で、ネメシス三部作にする構想があったらしい。ラフィール氏にもらったお金でマープルさんは、なにをするだろう? そしてなにが起こるだろう? なにを伝えてくれただろう? 妄想は尽きない。

アガサ・クリスティ
ポワロ
デビット・スーシェ (David Suchet) デビット・スーシェ (David Suchet)
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