武士の一分 Love and Honor

2006年 日本映画 3ツ星 チャンバラ 時代劇 障害

守りたかったのは愛ではなく、自分の名誉だった

前半はゆるいが、後半になって徐々に空気が張りつめていく。静かで、重たい緊張だ。キムタクの抑揚のない演技も、ここに来て存在感を増す。この空気の変化は素晴らしい。

映画を見終えて、「武士の一分」について考えてみる。失明は事故だし、妻を離縁したのも自分自身だ。甘言を弄した上役を憎み、果たし合いを挑む気持ちもわからなくもないが、「武士」は関係ないだろう。
要するに主人公は、たまったストレスを誰かにぶつけたかったがわけで、妻の密通がなければ下男が斬られていたかもしれない。

「武士の一分」を通すことで、主人公は武士になった。その矜持が、これからの人生を支えてくれる。愛する妻と食い扶持だけでは生きてはいけないのが武士なのだ。
そう考えると、「武士の一分」は空しいものだと思った。

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