ゴジラ(10) ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃 All Monsters Attack
1969年 特撮 4ツ星 主人公は子ども 夢 怪獣怪獣少年のジュブナイル
暴虐の象徴である怪獣が、まさか教育映画になろうとは。あまりに異質で、自分がなにを見ているのかわからなくなった。本作のミニラは等身大で、表情豊かで、しゃべって、おまけに幻覚である。これほど不気味な怪獣もない。そんなミニラに、不当な暴力に立ち向かう勇気を分けてもらう? 目まいを起こしそうな展開だ。
しかし怪獣映画の枠を外して見ると、かなり印象が変わる。
一郎少年は怪獣が好きで、夢見がちで、いじめられている(=怪獣を好きな子どもは少数派!)。ピンチに陥ったときに勇気をくれたのは、親でも、発明おじさん(天本英世)でもなく、夢の中の怪獣だった(=自分を孤立させた性癖が、自分を救ってくれる)。ラストでは、態度を豹変させたいじめっ子たちに迎合せず、自分の足で歩くことを選んだ(=仲良くすることを正解としない)。枝葉をのぞくと、けっこう深い物語が出てきた。
本編ではどうしてもミニラや怪獣映像に目を奪われる。いっそ怪獣が出てこなければ、傑作になったかもしれない。ウルトラセブンが、「セブンさえ出なければ傑作」と言われたことを思い出す。
怪獣ブームが去って、怪獣映画の予算も大きく削られた。去っていった仲間も多いだろう。そんな中で制作されたを思うと感慨深い。安直な映画と思っていたが、そうではなかった。
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