雪の女王 Снежная королева / Snezhnaya koroleva

1957年 外国映画 3ツ星 ファンタジー:童話 主人公は子ども

雪の女王≒ゲルダ

ゲルダのカイを思う気持ちは尋常じゃない。みちみち助けてくれる人はいるけど、艱難辛苦を乗り越えるのは彼女だけの力。猛烈な吹雪に見舞われても、鹿を切り捨てても、ゲルダは前に進む。
ゲルダとカイは幼なじみであって、夫婦じゃない。たとえ夫婦でも、あそこまで尽くせない。さりとてカイが同じくらいゲルダを愛していると言う描写はない。それでもゲルダの愛は揺るがない。彼女のひたむきさは、狂気を感じるほどだ。

劇中、ゲルダの声が不自然に反響するシーンがある。あとで知ったことだが、ゲルダと雪の女王は同じ声優が声をあてていて、つまり2人の内面が同じであることを示していた。すなわち、2人ともカイを(彼の意志にかかわらず)独占しようとしているのだ。
雪の女王がカイに特別な感情を抱いていたとは思えないが、ゲルダの気迫に押されて、負けを認めるシーンは印象的だった。傲慢な女王が、なんだか寂しそうに見える。

時代が変わり、アニメ作品があふれた現代人にとっては、「好きな少年のために戦う少女」というコンセプトは珍しくない。しかし1950年代の世相を考慮すると、本作の特殊性が浮かび上がってくる。
女王との同一性を潜ませる文学性も素晴らしい。若き日の宮崎駿が衝撃を受けたのも、むべなるかな。

全体的には冗長で、決してテンポがいいとは言えないが、見て損はない。あとで思い出すのはゲルダの強さと、雪の女王のせつなさだけだ。

ページ先頭へ