エースをねらえ! 劇場版 Aim for the Ace!

1979年 アニメ 5ツ星 スポーツ 夭折 学校

突き抜ける喜び

エースをねらえ! あらすじ

ふつうの女子高生 岡ひろみ は、才色兼備の天才プレイヤー・お蝶夫人(竜崎麗香)にあこがれ、テニス部に入部する。気楽に考えていた部活動だが、宗方コーチがひろみを代表選手に抜擢したことで、生活が一変する。宗方コーチの強烈なしごき、部員たちのいじめに悩まされ、ひろみは何度も辞めようとするが、言葉にできない理由で努力を重ね、一流プレイヤーに成長する。

映像センスがいい! 目に見えるものそのままではなく、要素を抽出して、アレンジして、二次元に落とし込んでいる。分割カットによる多角表現も素晴らしい! これがアニメ! これが映画! これが出崎統監督の演出センスか!

なぜ宗方コーチはひろみに肩入れするのか?

ひろみが被害者として苦しむなら、宗方も加害者として苦しんだ。ストレスから解放されるのは緑川蘭子を破ったときではなく、お蝶夫人がひろみをライバルに認めたときだ。あこがれの存在と肩を並べる興奮! 誰よりも自分に厳しいお蝶夫人は、じつは孤独な存在だった。宗方はひろみだけでなく、お蝶夫人の人生も変えた。それがわかったとき、ぐぐっと手に力がこもった。これほど充実感が得られるとは思わなかった。

しかし危うい。ひろみが結果を出さなければ、どうなっていたことか。宗方コーチはひろみを信じた理由を語らない。ひろみが悲壮な決意で尋ねても、いっさい説明しなかった。
理由は最後の最後で明らかになる。ひろみは、不遇のうちに亡くなった宗方の母に似ていたのだ。宗方は母の死を塗り替えるために──自分の手でひろみを幸せにするために鍛えていた。つまり、

テニスの才能なんて関係なかった!

狂気の愛が現実を歪める

宗方コーチは残された時間のすべてを(根拠なく)ひろみに賭けた。その思いが通じたのか、ひろみも(根拠なく)コーチを信じた。根拠がないから、ふたりの絆は固く、奇跡の成長を生んだ。逆に根拠があったら、どこかで挫折したかもしれない。
思えば『巨人の星』の星一徹も、息子・飛雄馬に見込みがあるから育てていたわけじゃない。どんな子であろうと巨人に入団させる決意が先にあって、現実をそこに近づけていった。無茶苦茶だが、だからこそ成功をつかむことができたのかもしれない。

正気にては大業ならず──。

スポ根はスポーツ指南書じゃない

いま、体罰が社会問題になっている。体罰によるスポーツ指導は古い。効果がない。それはそのとおりだ。しかしスポ根は、体罰を肯定するドラマじゃない。狂気の愛を描いたファンタジーなのだ。

関連エントリー

1979年 アニメ 5ツ星 スポーツ 夭折 学校
ノルウェイの森

ノルウェイの森

Norwegian Wood
2010年の日本映画 ★2

ドロドロしてるのに、乾いている 主人公には、病んだ女性を惹きつけるフェロモンがあるのだろうか? セックスを求めてくるのはいつも女性から。主人公はただそれを喰うのみ。永沢さんよりタチ (...)

恋空

恋空

KOIZORA
2007年の日本映画 ★1

これが最近の高校生の恋愛観、死生観ですか 「そんな馬鹿なぁ!」と叫ぶシーンが多くて、めまいを起こす。私のようなオジサン向けの作品じゃないのはわかるけど、ここまで感性がちがうと戸惑う (...)

生きる (主演:松本幸四郎)

生きる (主演:松本幸四郎)

ikiru
2007年の日本ドラマ ★4

おおむね、よいリメイク 黒澤明の映画「生きる」(1952)を、現代(2007)に置き換えたドラマ。時代背景をアップデートしているが、ストーリーはオリジナルに忠実。明るい画面とハッキ (...)

生きる

生きる

Ikiru
1952年の日本映画 ★5

ここから先は、あなたの物語 市役所で無気力な日々を過ごしていたオヤジが、余命わずかと聞いて一念発起、公園を作って、ブランコで歌いながら死んでいく話。 ストレートなタイトルと評判の高 (...)

酔いがさめたら、うちに帰ろう。

酔いがさめたら、うちに帰ろう。

Wandering Home Yoigasametara Uchinikaerou
2010年の日本映画 ★4

カレーライスを食べるたび思い出す アルコール中毒の悲惨さ、家族愛の素晴らしさを訴える映画だろうと思っていたし、そのとおりなんだけど、お涙ちょうだいドラマではなかった。「酔って暴力を (...)

毎日かあさん

毎日かあさん

Mainichi Kaasan
2011年の日本映画 ★2

宣伝パワーはすごい 同じ物語を2年連続で作った理由がわからない。『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』(2010)の方がずっとおもしろい。本作の興業収益がよかったのは、話題性と宣伝によ (...)

ページ先頭へ