山桜 Yamazakura

2008年 日本映画 2ツ星 チャンバラ 時代劇

人間味が足りない

野江(田中麗奈)も手塚(東山紀之)も表情に乏しく、なにを考えているのかよくわからない。いや、わからないことはないが、離縁や刃傷沙汰という大事件が起こるのだから、もっと強く気持ちを吐露してもよかったのではないか。
たとえば野江は、険悪だった嫁ぎ先から解放されて嬉しかったはず。一方、実家に迷惑をかける心苦しさもある。そうした葛藤と向きあわず、独り暮らしすれば解決と思うのは、現代人の感覚に見える。手塚にしても、ただ正義を行うだけじゃなく、切腹を回避し、同僚たちの評価を高めたい打算もあっただろう。2人とも状況に流されているだけで、魅力を感じない。

そしてラストもあいまい。あえて語らないのも1つの演出だが、100分の映画の決着としては納得できない。原作は未読だが、短編らしい。やはり短編を、そのまま長編にするのは無理がある。引き延ばしたり、くっつけるのではなく、2~3話のオムニバス形式にすれば、海坂藩で生きる人たちの人間模様が俯瞰できて、おもしろいかもしれない。

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