七人の侍 SEVEN SAMURAI

1954年 日本映画 5ツ星 時代劇

組織運営のシミュレーション

「かわいそうな村人を救うため、7人の侍がチャンバラする映画」と思っていたが、ぜんぜんちがった。これは組織運営の映画だ。すでに多くの論評があるので、今さら私が加える言葉もないが、おもしろかった点をメモしておきたい。

物陰から殴りかかるテストは、「お見事!」と褒めることが目的じゃないのか。
7人全員が凄腕ではなく、ムードメイカーやトリックスター、新人を交えている。
いちばん強いヤツはリーダーになれない。
リーダーは温厚でも、身勝手な村人には容赦しない。

メンバー構成の妙がわかるのは中盤以降。村人が善良でなく、仲間が死んでも崩れない組織のためには、これしかないと思える組み合わせだ。
戦闘シーンも見どころ満載。馬から落ちた敵に襲いかかる女たち、腰を抜かした敵は村人に任せる菊千代、倒した敵を数える勘兵衛。うまく進むと気がゆるみ、敵の数が減っても期待するほど崩れない。そして雨。あらかじめ決められたストーリーを演じているのではなく、めまぐるしく変化する状況に対応するライブ感がたまらない。

「また、生き残ってしまったな」
「今回も負け戦だった」

戦いに勝っても、居場所のない侍たち。勝四郎の恋も、一時の気の迷いとして処理されてしまった。土から離れた侍に、勝ち戦などありえないのか。ミッションを成し遂げてもハッピーになれないあたり、派遣社員のような悲哀があった。

おもしろかった。207分で、シーンの意味がわかるのは後半になるから、集中して見るのはつらいかもしれないが、学ぶべき点の多い映画だった。

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