エクソシスト The Exorcist

1973年 外国映画 5ツ星 モンスター:悪魔

注目すべきは人間の戦い

「少女に取り憑いた悪魔と、エクソシストの神父が戦うアクション映画」と思ってみると肩すかしを食らう。本作の見どころは少女の変貌や超常現象ではなく、カラス神父の葛藤にある。

聖職にありながら乞食を嫌悪したり、医師でありながら母親に不遇の死を遂げさせてしまったカラス神父の視点は、とても共感しやすい。悪魔とエクソシストの対決だけなら、これほど没入できなかっただろう。

メリン神父は考古学に詳しいだけの老人で、特別な訓練を受けたわけじゃない。冒頭の発掘シーンはおまけで、本編につながっていない。重要人物でありながら、その内面はまったく描かれていない。
しかし慧眼だった。これまでの経緯を話そうとするカラス神父に、メリン神父は「耳を貸すな」と助言する。この助言で、カラス神父が見聞きしたものに悪魔のウソが混じっていることに気づかされる。悪魔との戦いは、意志力を試されるのだ。
メリン神父は悪魔払いの知識と経験、そして強い意志力を備えていたが、持病の発作であっけなく死んでしまう。それもカラス神父が動揺して部屋を出た直後に。神父たちの連携が崩れた瞬間を狙われたようで、とても不気味だった。

結局、悪魔を祓うことはできたのか? 人間はそれを確かめることもできない。人間の無力さを思い知らされる。しかし人間には赦しと継承がある。ハッキリしないラストが印象的だった。

衝撃的なシーンを省いた最初の犠牲者、捜査に行き詰まる刑事、精神療法の一環として神父を紹介する医師たち、娘の奇行をどう形容するか迷う母親、僧衣をまとわない神父、イエズス会が悪魔と認めるための条件......。細かいところがリアルで、じわじわ怖くなった。無音のシーンが緊張感を高める。怖い映画だった。

エクソシスト
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