塔の上のラプンツェル Tangled

2010年 外国映画 5ツ星 @ディズニー @ディズニー長編アニメ

大切なものはなにか?

例によって原作『髪長姫』とは別物だが、ディズニー映画の方が楽しめる。ラプンツェルが出自に気づくとき、両親が娘を迎えるとき、あるいは酒場の荒くれ者や国民が彼女を受け入れるときに、特別な「証拠」はいっさい用いられない。無意識に描いていた紋章、髪を失っても変わらぬ瞳、人々を魅了するカリスマ性......。これぞ高貴な血筋のなせるわざだろう。ユージーンがラプンツェルへの愛と欲望を区別するため、多大な時間を空けたのも秀逸。すみずみまで神経が行き届いている。

マザー・ゴーテルが恐ろしい。力尽くでラプンツェルを閉じ込めるのではなく、希望を奪い、みずから塔に戻るように仕向けるとは。しかし考えてみると、ゴーデルもあわれだ。彼女は長生きだけが望みで、贅沢したり、世界に関わろうともしない。ゴーデルが何年生きたかは知らないが、彼女の人生はなんだったのだろう。

それとCG表現についても述べておきたい。ディズニーのCG映画は以前にもあったが、本作で完成の域に達したと言える。ラプンツェルの愛らしさ、情景の美しさ、躍動感は素晴らしい。以前はセルアニメを懐かしく思うこともあったが、もう吹っ切れた。50作目の節目にふさわしい傑作である。

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