ダークナイト ライジング The Dark Knight Rises

2012年 外国映画 3ツ星 テロ @DCコミックス

象徴としてのヒーロー

前作『ダークナイト』において、バットマンは汚名をかぶることで正義を成し遂げた。完璧な引退である。しかし現実世界の観客は、ヒーローの帰還を待っている。ブルースは引退してもいいが、バットマンは戦いつづけてほしい。本作は、この矛盾する願いに対するノーラン監督の答えは見事だった。鑑賞後、これでいいような、これしかないような、不思議な気持ちになった。釈然としないのは、名作の証だ。

ちぐはぐに感じる原因は、宿敵ベインに「思想」がないためだろう。ベインがバットマンに執着したのは、ミランダに認めてもらうためだった。ジョーカーのような芯がない。なにかあると期待してたので、底が見えると落胆した。『ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999)のテロリスト・レナードを彷彿させる。
ミランダもよくわからない。ブルースに身をゆだねたのは作戦か? 5ヶ月の猶予でなにを示したかったの? 人間の本性を暴き出すなら、ゴッサムを消去しない方が楽しめるだろう。まぁ、「ラーズ・アル・グールの遺志」と言われればそれまでだけど。
敵に共感できないと、戦いが盛り上がらない。狂った敵は、ただの災害と変わらない。

敵がなんであれ、バットマンは戦うためではなく、正義の象徴として帰還する。バットマンに直接助けてもらわなくても、「還ってきた」と思うだけで、みんな少しずつ強くなれる。この世に正義があるとわかる安心感。かつてなかったヒーロー像に感動した。

A hero can be anyone.
Even a man doing something as simple
and reassuring as putting a coat around a young boy's shoulders
to let him know that the world hadn't ended.

誰でもヒーローになれる。
特別なことをしなくても。
傷ついた少年の肩に上着をかけて、
世界の終わりじゃないと励ませばいい。

中性子爆弾の素をウェイン財団が作っていたとか、穴の底で背骨を治して這い上がるとか、消化に悪い要素も多いが、おもしろかった。3作連続でスケアクロウが出てくれたのもうれしい。キャットウーマンも美しい。よい完結編だった。

DCコミック
バットマン
バートン、シュマッカー
ノーラン三部作
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  • II/冒険篇
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