坂の上の雲 第3部 (#10-13) / NHKスペシャルドラマ SAKA NO UE NO KUMO / Clouds over the hill

2011年 日本ドラマ 4ツ星 ドラマ 主人公は軍人 実話に基づく 戦争 @NHK

ぜんぜん尺が足りない

日露戦争を陸と海から描いた第3部。映像の迫力はすさまじく、文献で読むより何倍も衝撃的だった。これが戦争。100年前の日本が挑んだ大勝負。これほどの犠牲と、これほどの幸運に支えられて、日本の近代ははじまったのか!

しかし情報量は少ない。当時の要塞攻略がいかに犠牲を伴うものであったか、乃木大将の余生がどのようなものであったか、日本海海戦において敵前大回頭を決意した思考過程とは、当時の日本軍が規律正しかった理由など、補足情報がなければ映像の意味がわからないばかりが、誤解される恐れがある。いや、それも私の認識とちがうというだけで、意味など各自で解釈すべきか?。うーん。

ドラマの最後に引用されると思っていたあとがきを紹介したい。

要するにロシアはみずから負けたところが多く、
日本はその優れた計画性と敵軍のそのような
事情のために、きわどい勝利をひろいつづけた、
というのが、日露戦争であろう。

戦後の日本は、この冷厳な相対関係を
国民に教えようとせず、
国民もそれを知ろうとしなかった。

むしろ勝利を絶対化し、日本軍の神秘的強さを
信仰することになり、その部分において
民族的に痴呆化した。

日露戦争を境とし、日本人の国民的理性が
大きく後退し、狂躁の昭和期に入る。

やがて国民と国家が狂いだして
太平洋戦争をやってのけて敗北するのは、
日露戦争後わずか40年のちのことである、
敗戦が国民を理性を与え、
勝利が国民を狂気にするとすれば、
長い民族の歴史からみれば、
戦争の勝敗などというものは 
まことに不思議なものである。

(あとがきニ 司馬遼太郎)

NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』は、映像のクオリティはきわめて高いものの、ストーリー展開は拙速だった。「坂の上の雲 明治の夢・歴史の今」でフォローされた部分もあるが、ドラマ(と歴史)を深く理解するためのNHKスペシャルを数本作ってもよかったと思う。

それから秋山好古ファンの私としては、やっぱり紹介された逸話が少なすぎる。本当にもったいない。

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