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2010年 外国映画 5ツ星 主人公は犯罪者 殺人鬼 狂気 痛い

きわめて特殊な事例と思いたい

超高級マンション「ビクトリアNo.1」ではじまった惨劇と、その犯人の過去が交互に描かれていく。ふつうの銀行員チェンが凶行におよんだ理由も興味深いが、やっぱり殺人シーンに目を奪われる。
体力も技術もない女性が、どうやったら大量殺人できるか? 制作者はいろいろ考えたんだろうな。結束バンドがトラウマになる。予想外の出来事がだんだん増えていく展開も素晴らしい。

チェンは余計なことをしゃべらない。相手をいたぶっているよう見えるときも、自分のリスクを減らすためと解釈できる。残忍というより、情けをかける余裕がないようだ。実際、中盤以降は危機の連続。こうなると殺人鬼を応援したくなるから不思議だ。一生懸命だから胸を打つのか。
殺す方も殺される方も真剣だけど、コミカルに見えてしまうところもいい。「こうなったらいいな」と思ったことが映像化されるのは痛快だった。ホラー映画ファンの喜ぶツボを心得ている。

回想シーンが終わった時、その前に殺されたと思った人がまだ苦しんでいる演出がすごい。なので回想シーンを見ている時も、「いま」どうなっているのか気になってしまう。人間がなかなか死なないところもリアル。一方で、包丁が骨も筋もないようにザクザク刺さるデフォルメは健在で、このあたりもバランスもよかった。

チェンは異常だが、映画が終わるころはなにが異常かわからなくなる。香港がこの世の地獄とは思わないが、だからこそ怖い。これは香港だけの、特殊な事例と思いたい。

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