世界侵略: ロサンゼルス決戦 Battle: Los Angeles

2011年 外国映画 4ツ星 主人公は軍人 地球外生命 戦争

戦いに集中できる喜び

ジョージ・パル監督の『宇宙戦争』(1953)から58年。宇宙からの侵略を描いた映画は、複雑化と原点回帰を繰り返してきた。本作は原点回帰で、ヒロイズムや平和思想を排除し、ひたすらサバイバルに集中している。そこが、たまらない。
戦場にまっ先に投入される海兵隊は判断が速くて柔軟だ。わずかな時間で宇宙人の弱点を探すシーンなどは、「それだ!」と手を叩いてしまった。作戦行動を超過すると弾切れが続出するのも、ありそうでなかったリアリティだ。

宇宙人のデザインもいい。あまり珍妙だと戦闘が成り立たないし、人間に似すぎるとモラルハザードを起こす。人間と非人間の、ほどよい中間に位置している。
ストーリーもよかった。民間人を交えることで、戦う理由が明確化する。タイムリミットが緊張感をもたせる。冗長にならないよう中盤で区切る。インターバルで深めた絆が、反撃戦を盛り上げる。このままゲーム化してほしい完成度だ。

この映画を見て「戦争賛美だ!」と批判する人には、侵略されたときどう行動すればいいのか聞いてみたい。本作に感動して軍隊に入ったアホが、宇宙人でなく人間を撃つことに悩んだとしても、それは映画の責任じゃない。軍隊も、そんなアホは必要ない。

敵が宇宙人である必然性はまったくない。某国の軍隊でも、テロリストでも、巨大イカの集団でも成り立つ。しかしそれではサバイバルの純粋性が損なわれる。てきぱき合理的判断を下さなければならない局面で、意見調整する愚かしさは、日常生活で見飽きている。私たちが見たいのは緊急事態だ。ふだんの常識や倫理観が通用しない状況を疑似体験したいのだ。そうした欲求がない人が見ても、意味はないだろう。

地球人の巻き返しがはじまるところで映画は終わる。中途半端な印象もあるが、ここから先はただの戦争映画だ。つまり、緊急事態ではない。私は十分満足したので、あとは兵隊さんにお任せしたい。

ページ先頭へ