007(22) 慰めの報酬 007(22) Quantum of Solace

2008年 外国映画 3ツ星 #007 スパイ

アクションと文学は両立できるか

とても難しい作品だった。監督はボンドの内面を、セリフではなく表情で語らせようとした。その試みはおおむね成功したが、アクションを期待した客は面食らっただろう。アクションを見る脳と、文学を解する脳は、即座に切り替えられない。

ダニエル・ボンドのアクションはかっこいい。格闘や射撃の腕前より、判断の速さに驚かされる。一瞬で最善の行動オプションを選択し、実行している。驚異的な知性と実行力。これがスパイの才能か。
しかしそれだけなら、ボンドは機械と同じ。ヴェスパーを愛し、失って、復讐の鬼となったボンドが、ふたたび冷徹な機械に戻るとき、彼は人間と言えるのだろうか?

ボンドはマティスの遺体をゴミ箱に捨てた。死者は生者になにも望まない。それを理解したのだ。本作の登場人物はみな言葉が少ないし、期待と食い違う行動をする。そうした表層的なところに惑わされず、言葉にされなかった言葉を読み取らなければならない。

おもしろいけど、難しい。ラストで、ぐっすり大胆に眠るシーンか、新しい女性を口説くシーンがあれば、平常運転にもどったと解釈できただろう。Mとの会話は軍人みたいで、もう少しウィットが欲しかった。

それとドミニク・グリーンが小物すぎる。ボンドを失脚させるだけなら、(ボンドに親しい)マティスやフィールズを挑発的に殺す必要はなかったはず。あれはドミニクがボンドを過剰に意識しているせいと思っていたが、ちがうのか? ドミニクは単なる商人で、ボンドと対になっていない。ミスター・ホワイトとの決着──哲学的な──を見たかった。たとえホワイトが今後のシリーズ共通の敵になるとしても、ここで決着をつけても損はなかっただろうに。

前後編でありながら、取りこぼした要素が多すぎる。よい点より、悪い点をたくさんピックアップできる。それでも、おもしろかったと言いたい。100%の感動を求めるのは欲張りすぎるから。

007シリーズ
ショーン・コネリー
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ジョージ・レーゼンビー
ロジャー・ムーア
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ティモシー・ダルトン
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ピアース・ブロスナン
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ダニエル・クレイグ
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