まおゆう魔王勇者 (全13回) Archenemy and Hero

2013年 アニメ 4ツ星 ファンタジー:剣と魔法 メイド 教養

丘の向こうへ

おもしろかった。ドラクエのパロディと思っていたけど、とんでもない。先人が生み出した名作からの引用は多いが、それは前提をわかりやすくするため。キャラクターに固有名詞がなく、記号化されていることもそうだ。魔王の叡智や、勇者の破壊力が極端すぎるのもそうだ。すべては次世代の物語を紡ぐためにある。

雰囲気は『狼と香辛料』そっくり。声優もスタッフも共通している人が多い。本作は『狼と香辛料』よりリアリティをゆるめ、その分、描く範囲を広げている。まるで達人のシミュレーションゲームを見ているように、世界がどんどん変わっていく様子を見るのは楽しい。
さらに驚くべきは、人物ドラマだ。魔王や勇者が人を信頼する。信頼された人が、それぞれの気持ちで行動し、想定をくつがえしていく。記号化されているのに、とても生き生きしている。
紅の子弟たち、青年商人、メイド姉妹。勇者パーティによる戦争の時代は終わった。次の世代にバトンをつなぎ、彼らの行く末を見守ろう。しっかりした理念が感じられる。

中世から近世への社会変化は、歴史の授業で学んでいる。魔王もかなり先まで見ているようだ。では、この物語が目指す「丘の向こう」とは? 近代化と民主主義を導入した次は? そこは私たちが考えるべきことなのだろう。

  • 第一章 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」
  • 第二章 「わたしたちをニンゲンにしてください」
  • 第三章 「いままでどこほっつき歩いていたのよ!」
  • 第四章 「そんなことになったら勇者に噛みついてやる!」
  • 第五章 「魔王っていい匂いだな」「勇者の腕の中はほっとする」
  • 第六章 「お帰りなさい、勇者!」「ああ、爺さん...ただいまだ!」
  • 第七章 「すぐに戻れる、すぐにまた会えるさ」
  • 第八章 「剣を取って、我が主」
  • 第九章 「わたしは"人間"だからっ」
  • 特別章(総集編) 「この物語は、駄肉だけではないのじゃ!」
  • 第十章 「あの人が置いた布石が、いよいよ意味を持ってくるのか」
  • 第十一章 「壊したり殺したりするばっかりで、何にも作ってないから」
  • 第十二章 「待たせたな、わたしの勇者」「寝坊しすぎだ、おれの魔王」

アニメは13話で終了する。原作第2巻の途中らしい。これはもう第2期を作ってもらうしかない。

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