病の起源 2013年版 (全4話) / NHKスペシャル Origins of diseases

2013年 日本ドラマ 4ツ星 ドキュメンタリー @NHK

病とはなにか?

人間の進化と病気の関係を解き明かすドキュメンタリー。案内役はどこかの図書館で、本と語らいながら疑問を解き明かしていく。CGによって臓器の働きが説明されるのは、「驚異の小宇宙 人体」(1989)を彷彿させる。
案内役は章ごとに異なるため、疑問に向き合うスタンスが微妙に異なる。また本は紙切れを渡すだけなので、ちょいと寂しい。やはり先生と聞き役がほしいところ。

一般的に病気は「正常でない状態」を指す。しかし番組を見ていると、直立二足歩行して、脳を巨大化させ、都市に集まって、昼も夜もなく活動する現代人はすでに「正常でない状態」と言える。がん、脳卒中、うつ、心臓病は、本来の設計になかった無理な使い方(進化)をしたことで生じた機能障害といえる。
しかし番組は安易な文明批判などせず、逆に科学によって病気を克服する試みを紹介して幕を閉じる。希望がある構成だ。

第1集「がん - 人類進化が生んだ病」(陣内孝則)

[概要] 多細胞生物である以上、細胞のコピーミスによるがんの発症は避けられない。人間がチンパンジーよりがんの発症率が高いのは、繁殖戦略、脳の巨大化、生活スタイルの変化のためだ。現在、がん細胞だけ抑制する新薬が開発中である。

[感想] 女性が男性を働かせるため、発情期のサインを消した。これに対応すべく、男性はつねに精神を作りつづけ、その遺伝子ががんに利用される。なんという連鎖。がんを克服しても、こうした障害は次々に見つかりそう。人間は基礎設計からやりなおすべきだな。
陣内の反応はいちいち大げさで、あまり内容を理解しているように見えなかった。

第2集「脳卒中 - 早すぎた進化の代償」(室井滋)

[概要] 人間の脳の血管は薄く、膨らみやすいため、破れたり(脳出血)、詰まったり(脳梗塞)する。脳の巨大化に血管がついていけなかったからだ。さらに塩分や脂の過剰摂取、ストレス、睡眠不足によって脳卒中のリスクは高まっている。

[感想] 細い血管が詰まっただけで身体が麻痺するなんて、ほんと、設計をやりなおしてほしいよ。首の血管に詰まったコレステロールが怖い。
室井滋の声はやさしいが、映像が伴うと違和感があった。

第3集「うつ病 - 防衛本能がもたらす宿命」(橋爪功)

[概要] 天敵から身を守るため、扁桃体はストレスホルモンを分泌して身体能力を高める。しかし緊張がつづけば意欲や行動の低下(うつ)が起こる。進化によって変容体は、危険、孤独、記憶、言葉、そして社会的不平等にも反応するようになった。現在、うつを克服するため脳深部刺激(DBS)といった外科療法や、行動療法が研究されている。

[感想] 天敵といっしょに飼育されたゼブラフィッシュや、仲間から隔絶されたチンパンジーもうつになるんだね。うつは機能障害だから、問題が取り除かれても平常に戻らない。心の持ちようじゃどうにもならない。
扁桃体が不平等(自分が得しても/相手が得しても)に反応するのは驚き。贅沢な暮らしによっても鬱になりえるのか。上司の命令で働く営業職や非技能職にうつが多いのもショックだし、納得した。「うつ」だけでシリーズを組んでほしい。
橋爪功の案内役はよかった。身につまされることが多いのかもしれない。

第4集「心臓病 - 高性能ポンプの落とし穴」 (谷村新司)

[概要] 人間は直立二足歩行、脳の巨大化、農耕・牧畜による食生活の変化、さらには痩せ願望によって、心臓の負担を高めている。心臓の細胞は胎児期にしか増えないため、栄養失調の母親から生まれた子どもは、一生、弱い心臓と付き合うことになる。心筋梗塞などで倒れると、これまでは安静がよいとされていたが、近ごろは運動によって回復することがわかってきた。とりわけ足は第二の心臓と呼ばれ、歩くことで心臓の負担を軽減できる。また低出力の衝撃波を心臓にかけることで、血管を増やす治療も研究されている。

[感想] これまた心臓によくない情報の連打。心臓に負担をかけないようにしたいが、避けられるものは避けてるし、難しいよな。しかもある程度は負担をかけないと駄目だし。歩こう。歩けるうちに歩こう。
谷村新司が心音と音楽の関係を述べるのはいいが、できれば自分以外の極にたとえてほしかったかな。あとはふつう。

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