ダーティハリー Dirty Harry

1971年 外国映画 4ツ星 刑事・警察

「試してみるか?」

主人公が司直の手に委ねず、私刑や復讐のため犯罪者や犯罪組織に挑む作品を「ヴィジランテ映画(Vigilante film)」と呼ぶ。本作はヴィジランテ映画の代表作。ハリーは悪人どもを次々に殺していく・・・と、言いたいところだが、そうでもない。

ハリーは善良な警官だった。命令を守り、法律を守る。撃つのは撃たれたあとの反撃か、撃つ以外で止められない場合のみ。むしろよく自制してる。
ハリーを批判するのはたやすいが、じゃあ、どうしろというのか? 法律が現実に追いついていないと感じさせる。上司や判事は犯罪現場から遠く、わかってないか、わかっていて目を逸らしている。厄介事は現場に任せ、自分は関わらない。賢いが、社会は荒廃していく。恐ろしい。

ハリーはやるべきことをやっているのに、拒絶される。ラスト、ハリーはバッジを捨てる。「アメリカン・ニュー・シネマ」の特徴である正義の敗北だ。ぐぐっと心に圧がかかる。 相棒チコも退職しちゃって、市民はこれからどう暮せばいい?

スコルピオも強烈だった。びっくりするほど小物。強くないし、賢くない。さんざん人をなぶっておきながら、自分が撃たれると泣きながら命乞いをする。姑息で稚拙な策なのに、警察もマスコミも振り回される。
こんなスコルピオを生み出し、育て、守るような社会は滅びていい。そう思ってしまう。

いい映画なんだけど、冗長なシーンは多い。冒頭はスコルピオを狙撃と逃走を、セリフもないまま見せられるけど、まったく必要ない。意味のあるシーンは1時間くらいだろう。それでもっクリント・イーストウッドの存在感が映画全体を引き締めている。すごい。おもしろかった。

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