獄門島 (長谷川博己#1) Gokumon-to

2016年 日本ドラマ 4ツ星 #金田一耕助 探偵

キレる金田一

 金田一耕助ファンにとって最大の関心事である「きちがいじゃが仕方がない」は、なんと原作通りに表現された。どうして2016年版は可能だったのか? 不可解な自粛に慣れちゃって、自粛しないことが不自然に思えてしまった。

 さておき、長谷川博己の金田一耕助は、悪くない。ひょろりとした風貌。若々しいが、頼りない。空気を読まない言動。死体が出るとエンジンがかかる。どことなく女性の庇護欲をそそる。
しかし尖ったところがないため、いささか物足りなく感じていたら、最後に爆発した。

 ご破算だ! 果たさなくていい約束を必死に果たして!
 無駄無駄無駄無駄無駄! 無意味ぃ!
 ご苦労様でした! ざまあみろだ! アハハハハ!
 見ろ! 全部解いてやったぞ! 思いも及ばぬこと? そんなものはない!
 ない! ない! そんなものはないんだあ! アハハハハ!

 なにこれ? おもしろいけど、唐突だよ。こんな隠し玉をもっているとは思わなかった。いや、亡霊との会話で軽く触れられていたけど、予想外だよ。

 救う気なんてなかったのかもしれません。
 ぼくはただ、わけがほしかったんです。
 こんにちを生きるわけが。
 どうしてぼくが生き残ったのか。

 金田一は良心に突き動かされて事件を追っていたのではなく、人が人を殺す心理や事情を知りたかっただけなのか。行動は立派だが、動機がズレている。おもしろい。そこを早苗が指摘すれば、ふたりの関係が特別なものになっただろうに。また同様の闇を抱えているだろう鵜飼青年との接点も少ない。不完全燃焼だ。

 ドラマも悪くない。閉鎖的、排他的な島と言われるが、陰鬱な空気はない。三姉妹はかしましいが、殺されて当然と思えるほどじゃない。早苗は美しいが、魅力に乏しい。きちんと描けているが、印象に残らない。

 事件が弱くても、キャラクターが強ければいい。金田一耕助の内面を掘り下げてくれたら、自作への期待もぐっと膨らんだだろうに。
 悪くないのに、惜しい作品だった。

金田一耕助
石坂浩二
渥美清
古谷一行
  • 名探偵・金田一耕助シリーズ
  • 1.本陣殺人事件(1983)
  • 2.ミイラの花嫁(1983)
  • 3.獄門岩の首(1984)
  • 4.霧の山荘(1985)
  • 5.死仮面(1986)
  • 6.香水心中(1987)
  • 7.不死蝶(1988)
  • 8.殺人鬼(1988)
  • 9.死神の矢(1989)
  • 10.薔薇王(1989)
  • 11.悪魔の手毬唄(1990)
  • 12.魔女の旋律(1991)
  • 13.八つ墓村(1991)
  • 14.悪魔が来りて笛を吹く(1992)
  • 15.女怪(1992)
  • 16.病院坂の首縊りの家(1992)
  • 17.三つ首塔(1993)
  • 18.迷路の花嫁(1993)
  • 19.女王蜂(1994)
  • 20.悪魔の唇(1994)
  • 21.悪魔の花嫁(1994)
  • 22.呪われた湖(1996)
  • 23.黒い羽根の呪い(1996)
  • 24.幽霊座(1997)
  • 25.獄門島
  • 26.悪魔の仮面(1998)
  • 27.悪霊島
  • 28.トランプ台上の首(2000)
  • 29.水神村伝説殺人事件(2002)
  • 30.人面瘡(2003)
  • 31.白蝋の死美人(2004)
  • 32.神隠し真珠郎(2005)
鹿賀丈史
豊川悦司
上川隆也
稲垣吾郎

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