ハウンター Haunter

2013年 外国映画 2ツ星 密室 幽霊 幽霊屋敷 殺人鬼

盛り上がらない

あらすじ

リサは16歳の誕生日の前日を繰り返していることに気づいた。家族に話しても通じないし、外に逃げても霧にまかれて家にもどってしまう。ある日、リサは洗濯機の裏側に赤い扉を見つける。

『キューブ』(1997)のヴィンチェンゾ・ナタリ監督の作品...という宣伝がなかったら、見なかっただろう。感想を述べると、「見なくてよかった」ってところ。ダメではないが、魅力のない映画だった。
出だしはおもしろい。『うる星やつら2』、『X-ファイル S6-14「月曜の朝」』、『SILENT HILL 4』、『まどか新編』などを思い出す。どんな仕掛けがあるんだろう? どうやって脱出するんだろう? あれこれ考えるのは楽しかった。しかし物語は迷走し、よくわからない結末を迎える。なんだかなー。

ループからの脱出=成仏

「ループもの」は通常の時間軸に脱出しようとするが、リサの場合、「自分はとっくに死んでいる」と考えている。そうとでも考えなくちゃ、時間と空間のループは説明できない。つまりループからの脱出は成仏を意味するわけで、どっちにしろ誕生日は来ない。このジレンマを、リサはどう考えているのか? どうせ死ぬから脱出をあきらめているんだろうか? そもそもリサは、外の世界への興味が乏しい。「友達に会いたい」「バンドの新譜を聞きたい」と言えば、「でも私たちが生きていたのは、もう何十年も前かもしれない」という疑惑が生まれ、おもしろくなっただろうに。

リサは「家族に話す」と「自転車で外に出る」をしただけで、脱出をあきらめてしまう。「徹夜する」「家を破壊する」「警察を呼ぶ」「家族を傷つける」「自殺する」など、やれることはあるだろうに。生きる気力がないリサは、まさしく、すでに死んだ存在と言える。

ところでリサはオリビアに取り憑いたとき、自分の腕にメッセージを書き込むが、あの教訓をいつ仕入れたんだろ? わからない。

要領を得ない変化

「ループもの」はいくつか定石がある。まず、ループに気づいたものは修正される。本作では、青白い顔の男に警告される。こいつが仕掛け人のようだ。学校の先生として電話してきたことより、リサの様子を観察していることに戦慄する。この世界では万能に等しい存在を、どうやって倒せばいいのか?
そしてループに気づくと変化が起こる。本作では、両親が喧嘩をはじめる。このあたりから、よくわからないことが増えていく。リサは驚くばかりで、仮説を立てることもない。視聴者も置いてけぼり。

誘拐魔の地縛霊?

えぇと、どういうことだ? 10代の少女ばかり狙った誘拐魔がいた。そいつは死んだが、屋敷に取り憑いて、そこに住んだ家族を殺してきた。被害者の霊魂はみんな、ループに閉じ込められている。ってことか? 「少女誘拐魔」と「地縛霊による一家惨殺」がごっちゃになる。どっちか片方で十分だろう。

なげやりな結末

リサは「自分だけ気づいている」と思っていたが、過去の被害者や未来のターゲットも気づいていて、連絡を試みていた。うお? 時間も超越するのか。おまけに家族も気づいていた。なんだそりゃ? 怒った誘拐魔は、少女たちを眠らせ、車で外に運んで、殺そうとする。え? なんで屋敷の中で殺さないの? ほかの少女たちもループしていたの? 幽霊が幽霊を殺すと、どうなるの?
結局、少女たちの霊が勝って、誘拐魔は焼却。誕生日を迎える夢を見ながら成仏。なんとなくハッピーエンドに見えるが、釈然としない。

死者と生者の逆転

リサは、家の中に死者(オリビア)の霊がいると考えるが、オリビアが現在の生者で、リサは過去の被害者の霊だった。という逆転はおもしろい。ウィジャボードで交信できなかったが、リサからオリビアへ、なにかしら連絡できたらよかったのに。
リサがオリビアに取り憑くシーンも唐突。オリビアがiPadに動画を残しておいたということは、ちょくちょく取り憑いていたのだろうか? 1985年の死者であるリサは、iPadの操作に戸惑うが、あっさり理解するのは拍子抜け。オリビアにすれば、リサはなんでも知ってる幽霊なのだろうか? この2人のやりとりを、映画のメインに据えればよかったのに。

「ループもの」という定番のネタを、どう料理してくれるのかと期待したが、いまひとつだった。残念。

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