透明人間 The Invisible Man

1933年 外国映画 4ツ星 SF モンスター

おもしろい!

あらすじ

 吹雪の夜、田舎村の宿屋に妙な男がやってきた。男は包帯とゴーグルで顔を隠し、部屋を借りてもコートを脱がない。食事中も口元をナプキンで隠す徹底ぶり。
 不気味さと横暴に堪えかね、宿屋の主人が追い出そうとした。男ははじめは弱気だったが、急に態度が横柄になって、正体を現した。彼は透明人間だった。高笑いをあげて逃げ出す透明人間に、集まった村人や警官たちは為すすべもなかった。

 透明人間は、グリフィンという科学者だった。彼は透明になる薬で透明人間になったのだが、元に戻れなくなった。この薬には凶暴化する副作用があった。グリフィンは元に戻るより、透明人間として世界征服しようと考える。
 同僚ケンプを訪ね、パートナーになれと命じる。ふたりは処方箋が書かれたノートを回収するが、グリフィンは警官を絞殺する。

 怖くなったケンプが警察に通報した。グリフィンは怒り、ケンプに殺害予告を出して逃走。列車事故や銀行強盗で百名以上の死傷者を出した。警察はケンプを守り、透明人間を捕獲しようとするが失敗。ケンプは殺された。

 グリフィンが馬小屋で寝ていると、寝息がすると通報される。警官隊は馬小屋を包囲して、火を付ける。グリフィンは逃げ出すが、雪の足あとで居場所がばれて、撃たれた。
 グリフィンは病院で息を引き取り、元の青年の姿に戻るのだった。

 H.G.ウェルズの原作小説が書かれたのが1897年だから、36年後の映像化。私が鑑賞したのは2020年。特撮技術は拙かったはずだが、どうしてどうして、魅了される。白いシャツとの追いかけっこや、勝手に走る自転車、飛ぶ帽子などなど。そりゃ最新CGと比べれば粗いが、必要十分だ。

 あと見せ方がうまい。顔を隠した男。不審な言動。だれだって顔を見たくなる。見せない、見せない、見せない、ちらり。期待感が高まったところで、透明人間が現れる。開始17分。いいテンポだ。
 ちなみに原作小説は、ここまでに約半分の頁を費やしている。

 透明人間は見えないだけで、実態は裸の男性。大したことはできないが、高い知能と良心の呵責がないせいで、多くの被害が出てしまう。警官が知恵を絞っても、透明人間のほうが賢いってのは衝撃的。
 原作どおり「ガラスの破片を撒く」「犬を手配する」をやれば、だいぶ追い詰められるだろう。そうなると、透明人間を強化したくなっちゃうか。

 惜しむらくは恋人の出番が少なく、研究ノートの行方がウヤムヤにされたところ。それも一気に最後まで見たあとの感想だから、傑作とたたえてよいと思う。


※骸骨を経由するとか、ほんとセンスがいい。

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